建設業が顧問契約と相性がいい理由
建設業許可業者は令和7年度末(2026年3月末)時点で483,823業者。国土交通省が2026年5月15日に公表した建設業許可業者数調査によれば、3年連続の増加です。母数が大きいことよりも重要なのは、この業種が「放っておくと必ず切れるもの」を複数抱えている構造にあります。
許可は5年ごとの更新。決算変更届は毎事業年度経過後4月以内(建設業法11条2項)。公共工事を受注するなら、経営事項審査(経審)の結果は審査基準日から1年7か月しか使えません(建設業法施行規則18条の2が「発注者と請負契約を締結する日の1年7月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていなければならない」と定める建て付けで、実務上は「審査基準日から1年7か月が有効期間」と説明されます)。入札参加資格も、多くの発注機関が2年サイクルで定期受付を行います。どれか一つでも落とせば、顧問先の営業が止まります。
更新だけをスポットで受ける関係だと、接点は5年に1度です。その間に別の事務所へ流れるのはむしろ自然でしょう。年間顧問は単価の話ではなく接点の設計です。毎年必ず動く手続を束ね、期限を先に押さえる。以下、決算日を起点にした設計の型を整理します。
決算日から逆算する — 顧問1年目に必ず組む締切
建設業顧問のスケジュールは、決算日を起点に組むと崩れにくくなります。経審の審査基準日は、原則として申請日の直前の事業年度終了日、つまり決算日だからです。ここがずれると、その後の全工程がずれます。
| 起点からの時期 | やること | 期限・注意点 |
|---|---|---|
| 決算日 | 審査基準日が確定 | 経審の有効期間はここから1年7か月(建設業法施行規則18条の2) |
| 決算後〜2か月 | 税務申告の完了を確認(税理士) | 決算書が固まらないと次に進めない |
| 決算後4月以内 | 決算変更届(工事経歴書・直前3年の施工金額・建設業法様式の財務諸表ほか) | 建設業法11条2項の法定期限 |
| 決算変更届と前後して | 経営状況分析を登録経営状況分析機関へ申請 | 国交省の一覧では令和7年1月現在10機関。増減があるため申請前に最新の一覧で確認 |
| 分析結果の受領後 | 経営規模等評価申請・総合評定値(P)請求 | 許可行政庁へ。日程は予約制の運用が多い |
| 結果通知の受領後 | 入札参加資格審査申請(定期または随時) | 発注機関ごとに受付時期が異なる |
実務上のボトルネックは、ほぼ決算書です。税務申告が遅れると経営状況分析から先が全部後ろ倒しになります。顧問なら全顧問先の決算月をカレンダーに載せ、決算の2か月前には「今期は経審を受けますか」を確認しておきたいところです。受けない年があるなら、それも記録に残します。なお登録経営状況分析機関は国土交通省の登録経営状況分析機関一覧で確認できます(令和7年1月現在10機関。登録番号に欠番があり、番号の最大値と機関数は一致しません)。追加・廃止のたびに更新されるため、申請前に最新版に当たってください。
許可更新は決算とは別軸で走ります。有効期間は5年で、更新申請は満了日の30日前までに受け付けられている必要があります。受付開始時期は許可行政庁によって差があり、大臣許可は満了日の3か月前から、都道府県知事許可は2〜3か月前からとする例が多く見られます。実際の取扱いは各行政庁の手引きで確認してください。
2026年時点で押さえておく制度改正
顧問の価値の半分は「制度が変わったことを先に伝える」ことにあります。2026年8月時点で、直近2年のうちに押さえるべき変更が3つあります。
- 2025年2月1日施行の金額要件見直し:特定建設業許可および施工体制台帳の作成を要する下請代金額の下限が4,500万円→5,000万円(建築工事業は7,000万円→8,000万円)、専任の監理技術者等を要する請負代金額の下限が4,000万円→4,500万円(建築一式工事は8,000万円→9,000万円)に引き上げ
- 2025年12月12日の改正建設業法・入契法の完全施行:著しく低い労務費等による見積りの提出・変更依頼の禁止など。中央建設業審議会は2025年12月2日に「労務費に関する基準」を勧告
- 2026年7月1日施行の経審改正(2026年2月6日告示):評価項目の入れ替えが行われた
経審改正の中身は4点です。①「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度(職人いきいき宣言)」の宣言が新たに5点の加点対象になった。同制度は2025年12月12日に申請受付が始まったばかりです。②就業履歴を蓄積するために必要な措置の加点配分見直し(民間工事を含む全ての建設工事は15点→10点、全ての公共工事は10点→5点)。③建設機械の保有状況の加点対象に不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャを追加。④雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況が審査項目から削除されました。
④は顧問先に誤解されやすい論点です。改正前のW1-1(雇用保険)・W1-2(健康保険)・W1-3(厚生年金保険)は、加入していても0点で加点はされず、未加入の場合に各▲40点という減点項目でした。今回削除されたのはこの減点項目であって、適切な社会保険への加入は建設業許可の要件のままです。すでに加入している顧問先のW点が下がるわけではなく、W(その他審査項目)の最低点が▲210点から▲90点になったにすぎません(最高点237点は変わりません)。実際に点が動くのは、就業履歴を蓄積するために必要な措置(民間工事を含む全ての建設工事15点→10点、全ての公共工事10点→5点)と、新設された自主宣言の5点です。次回の経審に向けては、この2点を軸に組み直すことになります。
用語も変わっています。2024年12月13日施行で「専任技術者」は「営業所技術者等」(営業所技術者・特定営業所技術者の総称)へ呼称変更されました。求められる要件そのものが変わったわけではありませんが、届出様式や顧問先への案内文の用語は揃えておきます。建設業許可のチェックリストを作っている事務所は、この機会に文言を洗い直すといいでしょう。
入札参加資格 — 2年サイクルと、2026年11月の国の定期受付
経審を受けただけでは公共工事は受注できません。発注機関ごとの入札参加資格審査を通る必要があり、経審の結果通知書はその添付資料になります。関東地方整備局の説明では、経審が必要になるのは国・地方公共団体などが発注する請負代金500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事とされています。
国の建設工事は、国土交通省が取りまとめる一元受付参加機関(法務省、財務省財務局、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、防衛省、最高裁判所、内閣府、高速道路会社ほか)については一元受付です。参加機関は発表ごとに別紙で示されるため、顧問先が狙う発注機関が対象かどうかを毎回確認します。国土交通省は2026年7月6日に、令和9・10年度の建設工事および測量・建設コンサルタント等業務の競争参加資格審査について、定期受付を11月に開始すると発表しました。2026年8月の今は、まさにその準備期間にあたります。顧問先が国の工事を狙うなら、経審の結果通知が受付期間に間に合うかを先に逆算してください。具体的な日程と参加機関は同発表の別紙および各機関の案内で確認します。
都道府県・市区町村は独自のサイクルで動きます。多くは2年ごとの定期受付ですが、受付月も申請方式(電子入札システムの種類、電子証明書の要否)もばらばらです。顧問なら、顧問先の営業エリアにある発注機関を一覧化し、受付月をカレンダーに固定するところまで踏み込みます。代行そのものより「取りこぼさない管理」に価値が出る領域です。
等級格付については、経審の総合評定値(P)に工事成績などの主観点数を加味して決める運用を採る発注機関があります。基準は機関ごとに公表されているので、思い込みで説明せず、必ず当該機関の資料に当たってください。ここを外すと顧問先の受注計画そのものが狂います。
業務範囲 — 隣接士業との線引きを契約前に紙にする
建設業の顧問は他士業と隣り合います。「建設業のことは全部お願いできる」と思われたまま走ると、後で必ず期待値がずれます。契約前に「やること・やらないこと」を1枚にしておくのが結局は早道です。
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01
行政書士 建設業許可の新規・更新・業種追加・般特新規、決算変更届などの変更届出、経営状況分析申請・経営規模等評価申請、入札参加資格審査申請、解体工事業登録、産業廃棄物収集運搬業許可 など
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02
税理士 税務申告・記帳・税務相談。決算書は税理士側で確定させ、行政書士はそれをもとに建設業法様式の財務諸表へ組み替える、という役割分担にする
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03
司法書士 商業登記。役員変更・本店移転・増資は登記が先で、登記事項証明書が変更届の添付になる。段取りだけは顧問側で握っておく
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04
社会保険労務士 社会保険・労働保険の加入手続、就業規則。許可要件としての加入状況は確認するが、手続そのものは社労士の業務
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05
弁護士 元請下請間の代金・工期をめぐる紛争の交渉や代理
建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録支援は、CCUSがオンラインで実施する「CCUS実務講習」を受講し、CCUSのホームページで連絡先を公表する「CCUS登録行政書士」(令和4年4月運用開始)として関わる形があります。経審のW点や自主宣言制度とも接続するので、建設業顧問との相性は良い領域です。線引きの考え方全般は業務範囲の記事もあわせてどうぞ。
顧問料の設計 — 定額に入れるもの、スポットに出すもの
顧問料は事務所差・地域差が大きく、横断的に信頼できる公表統計も限られます。他所の金額に合わせにいくより、「毎年必ず発生する作業」を定額に、「不定期で工数が読めない作業」をスポットに切るほうが、2年目以降に苦しくなりません。
- 定額に入れやすい:決算変更届、期限管理と事前通知、軽微な変更届(商号・所在地・役員等)、制度改正の情報提供、電話・メールでの相談対応
- スポットにしやすい:許可更新、業種追加・般特新規、経審一式(経営状況分析+経営規模等評価+総合評定値請求)、入札参加資格審査申請、事業承継の認可申請、CCUS登録
- 実費として明示する:登録免許税・許可手数料、経営状況分析の手数料、経審の審査手数料、証明書取得の実費
経審を定額に含めるかは判断が割れるところです。受けない年がある顧問先もいますし、許可業種の数で工数が大きく変わります。定額には入れず、顧問先には割引単価を適用する形にしておくと管理が楽になります。値付けの考え方そのものは報酬設定、契約書の組み立ては顧問契約の記事も参考にしてください。
落とさないための仕組みを先につくる
建設業顧問は、期限の数だけ事故が起きます。決算変更届の未提出は更新時に必ず露見し、過年度分をまとめて出す羽目になります。しかも建設業法50条1項2号は、11条1項〜4項の書類を提出しない場合および虚偽の記載をして提出した場合を、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象としています。「出し忘れ」で済む話ではありません。
管理は3層で考えると整理しやすくなります。①顧客台帳(許可番号・許可年月日・有効期間満了日・決算月・許可業種・経審の要否・入札参加している発注機関)、②年間カレンダー(決算月から逆算した各締切)、③通知(60日前・30日前・期限週の3段階)。Excelでも回りますが、顧問先が20社を超えると人の目では確実に漏れます。
申請そのものはJCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム、2023年1月運用開始)で電子化が進みました。ただ電子化されたのは提出であって、期限管理と資料回収は依然として事務所側の仕組みの問題です。更新期限の管理、建設業のリマインド設計、資料依頼の型を先に作ってから顧問件数を増やすほうが、結果的に早く積み上がります。
Q. 顧問を引き継いだら決算変更届が数年分たまっていました。どう処理しますか。
A. 原則として未提出の事業年度分をさかのぼって作成し、まとめて提出します。事業年度ごとに工事経歴書と財務諸表が必要になるため、当時の決算書を顧問先または税理士から集めるところが実務上の山場です。取扱いは許可行政庁によって差があるため、着手前に窓口へ相談してください。なお、建設業法50条1項2号は11条1項〜4項の書類を提出しない場合も罰則の対象としており、更新申請の前提としても未提出は解消が必要です。
Q. 経審は毎年受けなければならないのですか。
A. 法律上は毎年の受審が義務づけられているわけではありません。ただし経審の結果は審査基準日から1年7か月しか有効期間がないため、公共工事を切れ目なく受注し続けるなら、事実上は毎期受け続けることになります。逆に、当面は民間工事のみという顧問先であれば受けない年があってよく、その判断こそ顧問が事前に確認すべき事項です。
Q. 2026年7月の経審改正で社会保険の加入状況が評価項目から外れました。社会保険はもう気にしなくてよいのですか。
A. いいえ。外れたのは経営事項審査の評価項目(未加入の場合に各▲40点という減点項目)としての扱いだけで、適切な社会保険への加入は建設業許可の要件のままです。もともと加入していても加点はされない設計だったため、加入済みの顧問先の点数が下がるわけではなく、W点の最低点が▲210点から▲90点になっただけです。未加入のまま放置すれば許可の維持そのものに影響します。顧問先への説明では「経審の点数の話」と「許可要件の話」を明確に分けてください。加入手続そのものは社会保険労務士の業務範囲です。
Q. 入札参加資格の受付時期は、どうやって把握すればよいですか。
A. 発注機関ごとに個別に確認するしかありません。国の建設工事は、国土交通省が取りまとめる一元受付参加機関(法務省・財務省財務局・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・環境省・防衛省・最高裁判所・内閣府ほか、高速道路会社等を含む)については一元受付で、令和9・10年度分は2026年11月に定期受付を開始すると2026年7月6日に発表されています。参加機関は発表ごとに別紙で示されるため、顧問先が狙う機関が対象かどうかは毎回確認してください。都道府県・市区町村は独自のサイクルで、多くが2年ごとですが受付月も申請方式も異なります。顧問先の営業エリアの発注機関を一覧化し、公告ページを定期的に確認する運用を組むのが現実的です。
Q. 許可更新は顧問料の定額に含めるべきでしょうか。
A. どちらもあり得ますが、5年に1度しか発生せず工数も大きいため、スポット扱いにして顧問先向けの割引単価を設定する事務所が多い印象です。定額に含める場合は、5年分を按分して顧問料に織り込む設計になります。いずれにせよ、契約書で「定額の範囲」「別途費用」「実費」の3区分を明記しておくと、後の認識ずれを防げます。
顧問先ごとに違う締切を、やり取りと同じ場所に置く
決算変更届・許可更新・経審・入札参加資格は、顧問先ごとに別々の日付で走ります。期限表を別のファイルで持つと、連絡した内容と残っている作業がだんだん離れていきます。RenRakuはタスク管理(スタンダードプラン以上・月額2,980円税抜、3名まで)を顧客とのやり取りと同じ画面に置けるため、直近の連絡を見ながら次の作業を確認できます。担当アサインと引き継ぎメモがあるので、顧問先の担当が替わっても経緯が残ります。なお自動リマインドや一斉配信の機能はないため、声かけそのものは事務所側で行う前提です。
顧問先が増えたら、10名までのプランへ
RenRakuはスタンダードが3名まで月額2,980円、プレミアムが10名まで月額4,980円(いずれも税抜)です。プレミアムではメール・LINEアカウントの追加もできます。14日間の無料トライアルはカード登録不要です。
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本記事は2026年8月時点で公開されている情報に基づく一般的な解説です。金額要件・審査基準・受付時期・様式は、制度改正や許可行政庁・発注機関の運用によって変わります。実際の申請にあたっては、必ず所管の許可行政庁および各発注機関の最新の手引き・公告をご確認ください。また、税務申告および税務相談は税理士、商業登記は司法書士、社会保険・労働保険の手続は社会保険労務士、紛争の交渉・代理は弁護士の業務範囲です。