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単発依頼を顧問契約に切り替えられるかが、収益安定化の分岐点

行政書士の収益構造は、単発案件を積み上げるスタイルと、顧問契約で月次収益を積み上げるスタイルで大きく違います。単発中心の場合は継続的な営業が必要になりやすく、顧問契約を組み合わせることで月次収益を安定させやすくなります。顧問契約を一定数持てるようになると、単発案件だけに依存する場合と比べて、毎月の売上見通しを立てやすくなります。

単発で依頼をくれた顧客を、顧問契約に切り替えられる事務所とできない事務所の差は、提案のタイミングと内容の準備にあります。本記事では、顧問契約を提案すべき3つのタイミング、顧問サービスの設計、提案メール文例、契約書に必ず入れる5つの条項、解約条項の設計まで実務目線で整理します。価格設計の考え方は行政書士の報酬設定の考え方もあわせて参考になります。

顧問契約を提案すべき3つのタイミング

同じ顧客に同じ提案をしても、タイミングが違えば反応はまったく違います。顧問契約の提案が刺さりやすい瞬間は、おおむね以下の3つに集約されます。

  • 01
    単発案件の納品直後 業務内容や対応品質を顧客が具体的に把握しているため、今後の継続サポートを提案しやすいタイミング。「今後の更新・関連手続きもまとめて対応できます」と切り出す
  • 02
    複数の単発依頼を続けて受けた時 すでに信頼関係ができており、顧客側も都度発注の煩わしさを感じている可能性があります。複数回の単発依頼が続いている場合は、顧問契約を提案しやすいタイミング
  • 03
    顧客のビジネスが成長フェーズに入った時 許認可の更新・外国人雇用に伴うビザ手続き・新規事業開始時の許認可など、継続的な相談ニーズが生まれるタイミング。事業拡大の局面では予算も付きやすい

顧問契約に含めるサービスの設計 — 5つの区分を契約書に明記

「何を顧問料に含めるか」の設計が曖昧だと、後で業務範囲のトラブルになります。以下の5区分を契約書に明記しておくのが鉄則です。

  • 定例業務(月次顧問料に含む)
    月次の書類作成、行政手続に関する確認、役所への問い合わせ対応、行政書士業務の範囲内での電話・メール相談など、毎月発生する業務
  • スポット業務(別途料金)
    新規申請・大規模な書類作成・他県の許認可申請など、発生の都度追加料金で対応する業務。顧問先向けの優遇料金を設ける場合は、割引の有無・対象業務・適用条件を契約書や見積書で明確にする
  • 相談対応の範囲
    月次の相談時間や相談回数の上限を明示すると、無制限の相談対応になる事態を避けやすくなる。超過分は時間単価または別途見積りで対応する体系に
  • 顧問料の料金体系
    業務量に応じた複数プラン(ライト・スタンダード・フル)を用意すると、顧客の状況に応じた提案がしやすい。料金は相談頻度・対応業務・更新管理の有無・緊急対応の有無を踏まえて設計
  • 業務範囲の限定
    「行政書士業務の範囲内」と明記し、税務・登記・労務は対象外であることを契約書段階で明示。業際を超える期待値を最初から潰しておく

顧問契約の提案メール文例 — 納品後・継続依頼時の使い分け

顧問契約の提案メールは、状況に応じてトーンを使い分けます。

納品直後の提案メール

件名: 〇〇申請の完了のご報告と、今後のサポートのご提案

〇〇様

本日、〇〇申請が無事完了しました。ありがとうございました。

さて、今後も許認可の更新、外国人雇用に関する在留資格手続、関連する制度変更への対応など、継続的に確認が必要な場面が出てくるかと存じます。都度ご依頼いただくよりも、顧問契約の形でご利用いただくと、相談のハードルが下がり、事業の変化にも素早く対応できます。

月額〇万円で、下記のサービスをご提供しております。
・毎月の電話・メール相談(行政書士業務の範囲内・月〇時間まで)
・許認可更新手続きの優先対応
・許認可や行政手続に関係する制度変更情報の提供
・スポット業務は別途お見積りのうえ、顧問先様向け料金で対応

ご関心ありましたら、一度お話しさせてください。

3回目の単発依頼時の切り出し方

単発依頼を複数回受けている場合、メールだけで提案するよりも、面談や電話の中で顧客の状況を確認しながら切り出す方が、必要性を伝えやすくなります。「これまで継続してご依頼いただきありがとうございます。差し支えなければ、顧問契約という形でご利用いただくと、毎回お見積りを取る手間を減らしやすく、行政手続に関する相談もしやすくなります」と、顧客側のメリットを軸に切り出します。

顧問契約書に必ず入れる5つの条項

口頭合意で顧問契約を始めると、半年〜1年経過後にトラブルが発生しやすくなります。契約書に必ず明記すべき5条項を整理します。

① 業務範囲の明示

「本契約に基づく業務は、行政書士法に定める範囲内に限られ、他の法律により行政書士が取り扱うことを制限されている業務(行政書士法第1条の2第2項)は含まない」と明示します。税務相談・登記・労務手続き・紛争性のある交渉は対象外であることも明記。これがあると、業際を超える期待への対応が容易になります。

② 月額顧問料と支払時期

月額〇万円(税込)、毎月〇日締め・翌月〇日支払い、振込先口座等を明確に記載。スポット業務は別途見積りの旨も並記します。

③ 解約条項

解約予告期間は、顧問業務の内容、月次対応の重さ、引き継ぎの必要性に応じて設定します。一般的な月次相談型であれば短めの予告期間でも運用しやすい一方、継続管理案件が多い場合は、引き継ぎ期間を考慮して設計します。

④ 守秘義務と個人情報保護

行政書士法第12条の守秘義務、個人情報保護法に基づく情報管理を明示。あわせて契約終了後の情報保管期間、返却・削除方法、クラウドサービス等を利用する場合の外部委託先管理についても記載します。

⑤ 賠償責任の上限

賠償責任の範囲や上限を定める場合は、故意・重過失の扱い、消費者契約法第8条・第10条の適用可能性、行政書士賠償責任補償制度(全行団・行政書士職務基本規則第48条の努力義務)でカバーされる範囲との整合性を確認します。事務所側の責任を一方的に過度に免除する条項にならないよう、個別に設計する必要があります。

顧問先増加時の運営設計 — 何件で頭打ちになるか

顧問契約は増えれば増えるほど良いものではなく、対応キャパシティを超えると品質低下と離脱を招きます。1人事務所のキャパシティ上限は、顧問先の業務密度によりますが、概ね以下が目安です。

  • 軽い顧問契約(月次相談中心):相談頻度と返信時間を基準に管理
  • 標準的な顧問契約(更新案件含む):更新期限・月次対応・スポット業務の発生頻度を基準に管理
  • 密度の濃い顧問契約(建設業許可・在留資格を継続管理):担当者・補助者・案件管理ツールを前提に、対応品質を落とさない件数に絞る

顧問先が増えてきたら、補助者採用・案件管理ツール導入・受任停止の3択を検討します。行政書士補助者の採用と育成もあわせて参考になります。

顧問契約のアンチパターン5選

  • 01
    口頭合意で始める 月額・業務範囲・解約条件が曖昧なまま運用すると、後日トラブルになりやすい。最初から契約書を作る
  • 02
    業務範囲を限定せず「何でも対応」と書く 税務・登記・労務まで巻き込まれ、業際違反のリスクが上がる。行政書士業務に限定する明示が必須
  • 03
    月額相談時間の上限を設定しない 想定以上の電話・メール相談が続くと、顧問料に対する対応時間が過大になるケースがある。相談時間・相談回数の上限と、超過時の単価または別途見積りの扱いを契約書に明記
  • 04
    解約予告期間を業務内容に合わない形で長く設定する 月次相談型の顧問契約で過度に長い解約予告期間を置くと、双方が動きにくくなる。継続管理案件や引き継ぎが必要な業務では、実態に合った予告期間を設計する
  • 05
    顧問先を増やしすぎてキャパオーバー 新規受付を一時停止する勇気が必要。受任キャパを超えると品質が落ち、結果的に離脱が増える

顧問契約に関するよくある質問

行政書士の顧問料の相場は?

業務範囲と顧客規模で大きく変動します。小規模事業者向けの軽い相談プランから、建設業や外国人雇用を継続管理する企業向けのフルサポートまで幅があります。重要なのは「何を含めて何を含めないか」を契約書で明示することです。

顧問契約書に解約条項は必要ですか?

必須です。「1ヶ月前の書面通知で解約可能」等、双方が不利益を被らない条項を入れておくことがトラブル防止になります。長期予告(3ヶ月・6ヶ月)にすると、関係が冷え込んだ後も解約できず双方が困る状況になります。

顧問先が増えすぎて対応しきれない場合は?

新規受付を一時停止する、または補助者を採用して体制を整えるタイミングです。受任キャパを超えると品質が落ち、離脱につながります。1人事務所のキャパシティは業務密度により大きく異なるため、自分の処理速度を把握して上限を決めるのが安全です。

顧問料の値上げを切り出すタイミングは?

業務範囲の拡大、新規業務の追加、3年以上の据え置きが続いた段階で切り出すのが現実的です。「物価上昇」「事務所体制の強化」等の理由を添え、3〜6ヶ月前に書面で通知すると合意を得やすくなります。詳細は報酬設定記事も参考になります。

顧問先からスポット業務の依頼が増えた時は?

スポット業務は顧問契約とは別に都度見積りが原則です。顧問先様向け料金として通常価格の8〜9割で設定する事務所が多いです。スポット業務が頻発する場合は顧問プランの上位プランへのアップセル提案も検討します。

個人事業主との顧問契約は割が合いますか?

業務量と顧問料のバランス次第です。軽い顧問契約でも、相談時間を絞り、年1〜2回の更新案件で本格対応する設計なら採算が合います。ただし、毎週相談される運用になるなら通常価格の値上げか業務範囲の限定が必要です。

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※ 顧問契約の内容は個別の業務内容と顧客状況により異なります。契約書は事務所の実情に合わせて作成してください。

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