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経審は「公共工事を直接請け負う建設業者」の義務

経営事項審査(経審)は、建設業法27条の23第1項が「公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者」に義務づけた、経営に関する客観的事項の審査です。政令で定める工事とは、国・地方公共団体・公共法人等が発注者であり、かつ請負代金が1件500万円(建築一式工事は1,500万円)以上のものを指します(建設業法施行令45条)。応急工事などは除かれます。

つまり「公共工事の元請をやるなら必須、民間工事と下請だけなら不要」が原則的な線引きです。顧問先から「入札に出たい」と言われたら、まずここを確認します。審査は同条2項により、経営状況経営規模・技術的能力その他の客観的事項を数値で評価して行われます。

実務で押さえるべき評点は5つです。完成工事高(X1)、自己資本額と平均利益額(X2)、経営状況(Y)、技術力(Z)、その他の審査項目=社会性等(W)。ただし国土交通省の資料では、項目区分としては経営規模(X1・X2)/経営状況(Y)/技術力(Z)/その他の審査項目(W)の4区分とされ、X1とX2はいずれも「経営規模」の下に置かれています。別なのは項目区分ではなく評点で、X1とX2は別々に算出され、ウェイトも0.25と0.15で異なります。そのため実務では5つの評点として押さえるほうが実態に合います。総合評定値は P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W で算出します。

区分主な審査項目ウェイト最高点/最低点
X1完成工事高(許可業種別)0.252,309点/397点
X2自己資本額、利払前税引前償却前利益0.152,280点/454点
Y負債抵抗力、収益性・効率性、財務健全性、絶対的力量0.201,595点/0点
Z技術職員数(許可業種別)、元請完成工事高0.252,441点/456点
W社会性等(W1〜W8)0.152,073点/▲788点
P総合評定値2,159点/163点

この最高点・最低点は国土交通省の令和8年7月1日施行の改正資料による数値です。後述の改正でW点とP点の最低点が動いています。

申請の流れは3ステップ|決算変更届から総合評定値まで

経審の手続きは順番を間違えると必ず止まります。起点は決算です。決算が確定しなければ財務諸表が作れず、財務諸表がなければ経営状況分析にも進めません。

  • 01
    1. 決算変更届(事業年度終了届) 建設業法11条2項により、許可業者は毎事業年度経過後4か月以内に財務諸表その他の書類を許可行政庁へ提出します。ここが未提出だと経審の受付に進めないため、実質的な第1関門です。
  • 02
    2. 経営状況分析申請 国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関へ申請し、Y点が記載された分析結果通知書の交付を受けます。分析機関は令和7年1月時点で10機関。手数料や処理日数は機関ごとに異なります。
  • 03
    3. 経営規模等評価申請+総合評定値の請求 分析結果通知書を添えて許可行政庁(大臣許可は地方整備局等、知事許可は都道府県)へ申請します。総合評定値の請求自体は任意ですが、入札参加資格審査でP点を求められるのが通例のため、実務では必ず併せて請求します。

法定手数料は建設業法施行令46条に定めがあり、経営規模等評価の申請が8,100円+審査対象建設業1種類につき2,300円総合評定値の請求が400円+1種類につき200円です。これは国土交通大臣が行う場合の額です。知事許可分は各都道府県の条例で定められますが、地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成12年政令第16号)の表の27の項・27の2の項 が大臣許可とまったく同額を標準として定めているため、金額は実務上ほぼ全国共通です。一方、納付方法(収入証紙・現金・電子納付)や受付方法は自治体により異なるため、受任のたびに最新の手引きで確認してください。

有効期間は審査基準日から1年7か月|空白を作らない年次サイクル

審査基準日は原則として申請日の直前の事業年度終了日(決算日)です。そして結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7か月。通知書を受け取った日からではありません。根拠は建設業法施行規則18条の2で、「法第27条の23第1項の建設業者は、同項の建設工事について発注者と請負契約を締結する日の1年7月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていなければならない」と定められています。ここを取り違えると顧問先の入札参加資格に穴を開けます。

1年7か月という設定には意味があります。12か月+7か月なので、決算日から7か月以内に次の経審を終えていれば有効期間が途切れません。関東地方整備局も、継続的に公共工事を受注する場合は毎年決算終了後4か月以内を目安に申請するよう案内しています。決算変更届の法定期限と足並みが揃う設計です。

有効期間が切れると、その間は500万円(建築一式は1,500万円)以上の公共工事を発注者から直接請け負えません。入札参加資格の受付時期とも連動するため、年次スケジュールの管理そのものが付加価値になります。手順は公共工事の入札参加資格申請|経審から名簿登録までの手順と期限管理も参考にしてください。

顧問先ごとに管理台帳を作るなら、最低限そろえたいのは次の項目です。決算日(=審査基準日)決算変更届の期限(決算日から4か月)、経営状況分析の申請時期と分析機関の標準処理日数、経営規模等評価の申請時期(決算後4か月以内が目安)、結果通知書の有効期限(審査基準日+1年7か月)、そして入札参加資格審査の定期受付・随時受付の時期。最後の項目は発注機関ごとに時期が違うため、機関単位で持つ必要があります。

令和8年7月1日施行の改正|W点で3つの変更

令和8年2月6日に建設業法施行規則等の改正が公布され、令和8年7月1日以降の申請から新基準が適用されています。改正の視点は、①担い手の育成・確保、②災害対応力の強化、③令和2年の許可要件改正を踏まえた見直しの3点で、いずれもW点(社会性等)に集中しています。

審査項目改正前改正後
雇用保険の加入状況(W1-1)0/▲40点審査項目から削除
健康保険の加入状況(W1-2)0/▲40点審査項目から削除
厚生年金保険の加入状況(W1-3)0/▲40点審査項目から削除
就業履歴の蓄積措置(民間工事を含む全ての建設工事)15点10点
就業履歴の蓄積措置(全ての公共工事)10点5点
建設技能者を大切にする企業の自主宣言の有無5点(新設)
建設機械の保有状況(W7)9機種・最大15点11機種・最大15点
社会性等(W1〜W8)の合計237点/▲210点237点/▲90点

社会保険3項目の削除は、令和2年10月1日以降の許可要件に社会保険加入が加わり、更新サイクルが5年であることから令和7年10月1日以降に許可を持つ業者は当然に要件を満たすという整理によります。減点項目が消えただけなので、加入済みの業者に加点の増減はありません。ただし社会性等の最低点が▲210点から▲90点に変わり、W評点の最低が▲788点、P点の最低が163点へ動きました。

建設機械の拡大は災害対応力の強化が狙いで、令和6年能登半島地震での活用実績を踏まえ、従来の9機種に不整地運搬車アスファルト・フィニッシャが加わりました。W評点は「W1〜W8の合計×1,750/200」で換算されるため、社会性等が1点動くとW評点は約8.75点動きます。

点数アップは審査基準日より前にしか打てない手が多い

経審は決算日時点のスナップショットです。決算が締まってから相談を受けても、打てる手はほとんど残っていません。顧問先には決算日の3〜6か月前に一度声をかける——ここが単発受任と年間顧問を分ける分岐点になります。

新設の自主宣言(5点)はその典型です。加点要件は審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていること。決算日を過ぎてから宣言しても、その期の経審では加点されません。宣言は国土交通省のポータルサイト(職人いきいき宣言)から代表者名義で行い、元請事業者・下請事業者・発注者のいずれか1つの立場を選びます(重複不可)。制度ガイドラインでは元請・下請いずれの立場の宣言も経審の加点対象とされています。宣言の有効期間は申請日の翌月を起算日として2年経過後の最初の12月末まで。将来実施予定の取組も宣言できますが、申請時に設定する取組開始日(宣言日から1年以内)までに全ての取組を開始している必要があります。

審査基準日より前に手を打てる代表例を挙げます。W1のいわゆる三点セット——建退共への加入(15点)、退職一時金または企業年金制度の導入(15点)、法定外労災の加入(15点)で最大45点。CCUSの就業履歴蓄積措置(10点/5点)は現場での運用実績が要るため直前対応では間に合いません。建設機械の保有・リースは14台以上で最大15点、令和8年7月以降は不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャも対象です。ただしリースで計上するには審査基準日から1年7か月以上の使用期間が定められているリース契約である必要があり、決算直前に短期リースを組んでも加点されません。機種ごとに特定自主検査記録表や製造時等検査証明書などの確認書類も求められます。ほかに防災協定の締結(W3・最大20点)、研究開発(W6・最大25点)、ISO9001等の認証(W8・最大10点)、建設業経理の体制(W5・監査の受審状況最大20点+公認会計士等数最大10点)があります。

数字の選択でも差がつきます。完成工事高は2年平均か3年平均かを選択できますが、業種ごとにバラバラの選択はできず全業種で統一が必要です。X2の自己資本額も基準決算のみか2期平均かを選べます。平均利益額は利払前税引前償却前利益(営業利益+減価償却実施額)の2期平均で固定です。Y点は8指標から求めた経営状況点数Aに所定の係数を適用し、Y=167.3×A+583で算出されます。

受任前に確認したい業際の線引きと自治体差

まず業際です。決算変更届に添付する建設業財務諸表は、確定した決算書を建設業法上の様式へ組み替えたもので行政書士が作成できます。一方、法人税申告書そのものの作成や税務相談は税理士の業務です。Y点を上げるために「決算の中身を組み替えましょう」という話になった時点で、税理士へ引き継ぐ判断が必要になります。

社会保険も同様です。W1-1〜W1-3が削除されても、社会保険加入は建設業許可の要件として残ります。そして加入手続そのものの代行は社会保険労務士の業務です。境界の整理は行政書士の業際問題|弁護士・司法書士との線引きを整理もあわせてご覧ください。

次に自治体差です。知事許可では申請書の様式、添付書類、予約制の有無、手数料の納付方法が都道府県により異なります。前述のとおり手数料の金額は標準政令に沿ってほぼ全国共通ですが、納め方と受付方法は別問題です。「経審の手引き」は毎年更新されるため、前年のメモをそのまま使うのは危険です。電子申請はJCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)が令和5年1月から稼働しており、代理申請には申請者と代理人の双方にGビズIDプライムが必要です。

まとめ

経審は決算変更届→経営状況分析→経営規模等評価・総合評定値請求という3ステップの手続きです。起点は決算日であり、決算変更届の法定期限(決算後4か月)と経審の推奨申請時期がほぼ重なる設計になっています。

有効期間は審査基準日から1年7か月。通知書の受領日ではありません。建設業法施行規則18条の2が根拠であり、この7か月の余裕をどう使うかが、顧問先の入札参加資格を切らさないための実務そのものです。

令和8年7月1日施行の改正では、社会保険加入に関する3つの減点項目が削除され、CCUSの就業履歴蓄積措置の配点が下がり、代わりに建設技能者を大切にする企業の自主宣言(5点)が新設されました。建設機械の加点対象も11機種に拡大しています。

最大の実務ポイントは、点数アップの手は審査基準日より前にしか打てないものが多いということ。決算日を起点に逆算するカレンダーを持てるかどうかが、単発の書類作成と年間顧問の分かれ目です。設計の考え方は建設業者の年間顧問を設計する|許可更新・経審・入札参加資格の実務で詳しく扱っています。

Q. 下請専門の建設業者でも経審を受ける必要がありますか。

A. 建設業法27条の23第1項が受審を義務づけているのは、政令で定める公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者です。下請としてのみ施工する場合、法律上の受審義務はありません。ただし、元請から取引の条件として求められる場合や、将来の元請参入・入札参加資格の取得に備えて受審するケースはあります。

Q. 経審の結果通知書の有効期間は、いつから数えますか。

A. 審査基準日(原則として直前の事業年度終了日=決算日)から1年7か月です。結果通知書を受け取った日からではない点に注意してください。根拠は建設業法施行規則18条の2で、「発注者と請負契約を締結する日の1年7月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていなければならない」と定められています。有効期間を切らさないためには決算日から7か月以内に次の経審を終える必要があり、実務では決算終了後4か月以内の申請が目安とされています。

Q. 令和8年7月の改正で社会保険の減点がなくなると、点数は上がりますか。

A. 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の3項目は、未加入の場合に各▲40点となる減点項目でした。すでに加入している企業はもともと減点0だったため、削除によって加点が増えるわけではありません。変わったのは社会性等の最低点で、▲210点から▲90点になり、これに伴いW評点の最低が▲788点、総合評定値P点の最低が163点となりました。

Q. 自主宣言の5点は、いつまでに宣言すれば加点されますか。

A. 加点要件は「審査基準日が宣言日以降であること」および「宣言書と誓約書が提出されていること」です。つまり決算日より前に宣言を済ませておく必要があります。決算日を過ぎてから宣言しても、その期の経審では加点されません。宣言は国土交通省のポータルサイトから代表者名義で行い、元請事業者・下請事業者・発注者のいずれか1つの立場を選びます。

Q. 経審の申請手数料はいくらかかりますか。

A. 建設業法施行令46条により、経営規模等評価の申請は8,100円に審査対象建設業1種類につき2,300円を加算した額、総合評定値の請求は400円に1種類につき200円を加算した額です。これは国土交通大臣が行う場合の額で、知事許可では各都道府県の条例により定められます。ただし地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成12年政令第16号)の表の27の項・27の2の項が大臣許可と同額を標準として定めているため、金額は同政令の標準額に沿ってほぼ全国共通です。一方、納付方法・受付方法は自治体により異なります。このほか、経営状況分析機関に支払う手数料が別途必要です。

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※ 本記事は執筆時点(2026年8月)の法令および国土交通省等の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別事案への適用を保証するものではありません。経営事項審査の様式・受付方法・手数料の納付方法・標準処理期間は許可行政庁により異なり、制度改正も行われます。実際の申請にあたっては、必ず許可行政庁が公表する最新の手引き等をご確認ください。

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