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「経審を受ければ入札できる」ではない

「公共工事を受注したい」という相談を受けたとき、最初に整理すべきは手続が二段構えになっている点です。まず許可行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)の経営事項審査を受け、その結果通知書を持って、入札に参加したい発注機関ごとに競争入札参加資格審査申請を行います。経審を受けただけでは、どこの入札にも参加できません。

経審が義務づけられる範囲は建設業法第27条の23と同法施行令第45条(公共性のある施設又は工作物に関する建設工事)が定めており、国・地方公共団体・法人税法別表第一に掲げる公共法人(地方公共団体を除く)等が発注者で、かつ工事1件の請負代金の額が500万円(建築一式工事は1,500万円)以上の工事が対象です。災害による応急の建設工事などは除かれます。

発注機関は国土交通省の各地方整備局、他の省庁、都道府県、市町村、公社・事業団など多岐にわたり、有資格業者名簿もそれぞれ別に作られます。「県の資格は取ったが市の名簿に載っておらず入札できない」という相談は珍しくないため、受任時に狙う発注機関を先に確定させておくと後戻りが減ります。

経審の「1年7か月」は結果通知書の日付から数えない

建設業法施行規則第18条の2は、公共工事について「発注者と請負契約を締結する日の1年7月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていなければならない」と定めています。ここでいう事業年度終了の日が審査基準日で、原則として申請日の直前の決算日です。

実務で誤解が多いのは起算点です。有効期間は結果通知書を受け取った日からではなく、審査基準日から1年7か月です。決算から申請までを引き延ばすほど、実際に使える期間は短くなります。国土交通省九州地方整備局の手引きでは、毎年決算終了後4か月を目安に経審を申請するよう案内されています。

さらに、入札参加資格の有効期間(多くの発注機関で2年)と経審の有効期間はズレます。名簿に登録されていても経審が切れていれば公共工事の請負契約そのものを締結できないため、この二本の期限は別々に管理する必要があります。

  • 審査基準日=原則として申請日の直前の事業年度終了日(決算日)
  • 経審の有効期間=審査基準日から1年7か月。結果通知書の受領日は起算点にならない
  • 入札参加資格の有効期間は発注機関ごと(国の令和7・8年度資格は令和9年3月31日まで)
  • 経審が切れると、有資格業者名簿に載っていても契約を締結できない

経審の申請手順と法定手数料

経審は、経営状況(Y)を登録経営状況分析機関が、経営規模等(X・Z・W)を許可行政庁が審査する分業構造です。総合評定値(P)は、先に取得した経営状況分析結果通知書を添えて、経営規模等評価申請と同時に許可行政庁へ請求するのが通常です。順序は、①決算変更届の提出、②経営状況分析の申請、③経営規模等評価申請と総合評定値請求、という流れになります。

見落とされやすいのが①です。建設業法第11条第2項により決算変更届は事業年度経過後4か月以内に提出する必要があり、これが未提出だと経審に進めません。数期分をまとめて作り直す作業が発生することもあるため、受任時点で提出状況を必ず確認します(建設業許可の確認事項もあわせて)。

登録経営状況分析機関は国土交通省が一覧を公表しており、申請者が自由に選べます。分析手数料は機関ごとの設定なので、金額は各機関への確認が必要です。一方、許可行政庁に納める手数料は、大臣許可の場合は建設業法施行令第46条第1項(経営規模等評価=8,100円+2,300円×審査対象建設業の種類数)・同条第2項(総合評定値請求=400円+200円×同)で定められています。知事許可の場合は各都道府県の手数料条例によりますが、地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成12年政令第16号)の表の27の項・27の2の項が同額を標準として定めているため、実務上は同額です。

手続申請先手数料
経営状況分析(Y)登録経営状況分析機関機関ごとに設定(各機関へ要確認)※法定手数料ではなく各登録機関が定める料金
経営規模等評価申請(X・Z・W)のみ許可行政庁8,100円+2,300円×審査対象業種数
総合評定値請求(P)のみ許可行政庁400円+200円×審査対象業種数
経営規模等評価申請+総合評定値請求許可行政庁8,500円+2,500円×審査対象業種数

納付方法は国土交通大臣許可であれば収入印紙ですが、知事許可は都道府県ごとに証紙・キャッシュレス決済など取扱いが異なります。電子申請は建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)で可能ですが、対応状況や事前予約の要否は行政庁ごとに違うため、初回受任時は最新の手引きで確認してください。

入札参加資格審査申請は発注機関ごとに別々に出す

  • 01
    国交省 地方整備局等 「道路・河川・官庁営繕・公園関係」(22工事種別)と「港湾空港関係」(5工事種別)で提出先が分かれ、前者は総務部契約課、後者は総務部経理調達課。両方を希望するならそれぞれに申請が必要
  • 02
    他の中央省庁 全省庁統一資格(調達ポータル)は物品の製造・販売等が対象で、建設工事は含まれない。建設工事は各省庁・各機関が個別に受け付ける
  • 03
    都道府県 概ね2年に1回の定期受付。電子入札共同システム等からの電子申請が主流で、県税納税証明書などの添付書類が求められる
  • 04
    市町村・一部事務組合 都道府県とは別申請。複数市町村がまとまって共同受付を行っている地域もある

国の場合、有資格業者名簿は2年ごとに更新され、令和7・8年度資格の有効期間は令和9年3月31日までです。定期受付はインターネット方式が原則で、定期受付の終了後は随時受付が行われます。

随時受付で求められる経審の条件は定期受付と異なり、「申請をする日の1年7月前までの間の決算日を審査基準日とするもので、かつ申請をする日の直前に受けたもの」とされています。資格の認定日も定期受付より後になるため、いつから入札に参加できるのかを顧客に説明しておく必要があります。

手引きには、重複申請を避けること、一度提出した申請書類は原則として修正できないこと、認定を取り下げると同一有効期間内は再申請できないことが明記されています。「新しい審査基準日の総合評定値通知書が出たので差し替えたい」という要望は通らない前提で、提出前の確認を徹底します。

総合点数と格付け|P点がそのまま順位になるわけではない

地方整備局(道路・河川・官庁営繕・公園関係)の資格審査では、総合点数=経営事項評価点数+技術評価点数で順位付けと格付けが行われます。前者が客観的事項、後者が発注者独自の主観的事項にあたります。

経営事項評価点数は「0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W」で算定され、ウエイトは経審の総合評定値Pと同じです。ただし国土交通省は22の工事種別ごとに、経審は建設業法上の29業種ごとに算定するため、両者の点数が一致しない場合があります。この点を先に伝えておくと、通知書を見た後の問い合わせが減ります。

技術評価点数は、主観的事項の審査基準日の前日までの4年間に完成した工事の成績等をもとに算定されます。実績のない新規参入業者は点数が積み上がらず、一般土木工事・アスファルト舗装工事・造園工事では技術評価点数が0点の場合に最下位等級へ格付けされる扱いです。

つまり「経審のP点を上げれば上位ランクに行ける」という説明は正確ではありません。まず最下位等級で受注実績をつくり、工事成績を積み上げて上位等級を目指すという段階的な設計を前提に助言するのが実務的です。

2026年に押さえておく2つの動き

1つ目は経審の改正です。令和8年2月6日公布の国土交通省告示第262号等により、令和8年7月1日から審査項目・基準が改正されました。主な内容は、社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)の加入の有無に関する審査項目の削除、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言状況に係る加点の新設、加点対象建設機械への不整地運搬車およびアスファルト・フィニッシャの追加、就業履歴蓄積措置に係る点数の変更です。

注意したいのは、社会保険の項目が経審から外れても、社会保険への加入が建設業許可の要件であることに変更はない点です。「加点されないなら未加入でもよい」という誤解を招かないよう、説明の言い回しに気をつけてください。なお改正前の基準で結果通知を受けた場合、改正の日から120日以内に限り、当該改正に係る事項についてのみ再審査を申し立てることができます(建設業法施行規則第20条第2項。通常の再審査は結果通知を受けた日から30日以内=同条第1項)。申立先は大臣許可なら国土交通大臣、知事許可なら当該都道府県知事です(同条第5項)。

2つ目は国の定期受付です。国土交通省は令和8年7月6日の報道発表で、令和9・10年度の建設工事および測量・建設コンサルタント等業務の競争参加資格審査について、定期受付を11月に開始すると公表しました。具体的な受付期間と参加機関は報道発表の別紙に記載されているため、受任前に原典を確認してください。

都道府県の定期受付は前年度の秋から冬にかけて行われることが多く、たとえば新潟県の令和8・9年度建設工事等入札参加資格審査申請の受付期間は令和7年10月1日から12月26日まででした。受付時期・提出方法・随時受付の可否はいずれも自治体により異なるので、案件ごとに公式の申請要領を確認する前提で動きます。

受任時のチェックリストと期限管理

  • 決算期と決算変更届の提出状況(未提出の事業年度が残っていないか)
  • 審査を受ける業種の絞り込み(手数料が業種数に比例するため)
  • 登録経営状況分析機関の選定と、前期までの分析結果通知書の有無
  • 狙う発注機関の一覧化と、それぞれの定期受付・随時受付の時期
  • 電子入札用ICカードの取得状況(電子入札コアシステム対応の民間認証局から購入し、名義人は代表者または権限の委任を受けた者)
  • JCIPを使う場合の前提となるgBizIDアカウントの準備状況
  • 商号・本店所在地・代表者・許可業種などに変更があった場合の変更届の要否

この業務は「一度取って終わり」ではなく、毎年の経審と概ね2年ごとの資格更新が回り続けるストック型の業務です。顧客ごとに決算期・審査基準日・経審の有効期限・資格の有効期限・次回定期受付の時期を一覧で持てているかどうかが、そのまま事務所の受注余力になります(更新期限の管理建設業許可のリマインド設計)。

添付書類の回収も負荷が大きい部分です。決算書、納税証明書、技術者の資格証、保険料の領収書など顧客側に動いてもらう書類が多く、ここで止まると受付期間に間に合いません。書類回収の効率化を先に整えておくと、秋から冬の定期受付シーズンの詰まりが軽くなります。

なお報酬設計や業務範囲の線引きについては、報酬額の決め方行政書士の業務範囲もあわせて確認しておくと、見積もりの段階で認識のズレを防げます。

Q. 経営事項審査を受けていれば、すぐに公共工事の入札に参加できますか。

A. できません。経審は許可行政庁が行う客観的事項の審査で、入札に参加するには参加したい発注機関ごとに競争入札参加資格審査申請を行い、有資格業者名簿に登録される必要があります。国土交通省の地方整備局、都道府県、市町村はそれぞれ別の名簿を持つため、狙う発注機関の数だけ申請することになります。

Q. 経審の有効期間「1年7か月」は、いつから数えますか。

A. 審査基準日(原則として申請日の直前の事業年度終了日=決算日)から起算します。結果通知書を受け取った日からではありません。建設業法施行規則第18条の2により、公共工事の請負契約を締結する日の1年7月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経審を受けている必要があるため、毎年決算後に切れ目なく受審する運用になります。

Q. 入札参加資格の定期受付を逃した場合はどうなりますか。

A. 国土交通省地方整備局等では定期受付の終了後に随時受付が行われており、そこで申請できます。ただし随時受付では求められる経審の条件が定期受付と異なり、資格の認定日も後ろにずれます。都道府県・市町村については随時受付の有無や時期が自治体ごとに異なるため、個別に申請要領を確認してください。

Q. 経審の法定手数料は業種数で変わりますか。

A. 変わります。経営規模等評価申請と総合評定値請求を同時に行う場合、8,500円に審査対象建設業1種類につき2,500円を加算した額です(建設業法施行令第46条第1項・第2項の合計。8,100円+2,300円×業種数と、400円+200円×業種数を合算した額)。なお同条は大臣許可の場合の規定で、知事許可の場合は各都道府県の手数料条例によりますが、地方公共団体の手数料の標準に関する政令で同額が標準として定められています。審査業種を増やすほど費用が上がるため、実際に入札で使う業種に絞る設計が必要です。納付方法は国土交通大臣許可では収入印紙、知事許可では都道府県ごとに異なります。

Q. 令和8年7月の経審改正で社会保険の審査項目がなくなりましたが、未加入でも問題ありませんか。

A. 問題があります。経審の審査項目からは削除されましたが、社会保険への加入が建設業許可の要件であることに変更はなく、引き続き加入が必要です。また、発注機関の競争参加資格審査では別途社会保険関係の確認書類が求められる場合があるため、各機関が公表する受付要領で最新の取扱いを確認してください。

発注機関ごとに散る手続を、顧客単位で束ね直す

入札参加資格は発注機関ごとに別々の申請で、受付時期も提出方法も揃いません。顧客が増えると「どこに出して、どこがまだか」が担当者の頭の中だけに残ります。RenRakuは顧客カードとRenRakuノートに機関ごとの状況やメモを残せるので、経審の結果から次の受付までを一つの流れとして確認できます。過去のやり取りは横断検索で引けるため、前回どの様式で出したかも辿れます。作業を分担する場合は、タスク管理と担当アサインが使えるスタンダードプラン以上が対象です。

機関ごとの状況は、ノートに書き足す

RenRakuノートには顧客ごとの補足を書き足せます。タスク管理と担当アサインはスタンダード(3名まで月額2,980円・税抜)から使えます。14日間の無料トライアルはカード登録不要です。

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※ 本記事は執筆時点(2026年8月)の法令および公表資料に基づく一般的な解説です。経営事項審査の審査項目・基準、手数料、入札参加資格審査の受付時期・有効期間・提出書類は、許可行政庁や発注機関ごとに異なり、また改正されることがあります。実際の申請にあたっては、国土交通省および各発注機関・許可行政庁が公表する最新の手引き・申請要領を必ずご確認ください。

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