許可は「都道府県知事」が原則、政令市が出る場面もある
産業廃棄物の収集又は運搬を業として行うには、業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可が必要です(廃棄物処理法14条1項)。見落とされやすいのが、条文の括弧書きにある「運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る」という部分です。単に通過するだけの都道府県の許可は要らず、積む場所と卸す場所を管轄する自治体の許可を取る、という構造になっています。
依頼者から「関東一円で動きたい」と言われて、そのまま1都6県分を見積もるのは早計です。実際に積卸しが発生するのはどこか、荷主と搬入先はどこにあるのかを詰めてから件数を確定しないと、見積りが過大にも過少にもなります。ここは着手前の30分のヒアリングで潰せる論点です。
政令市の扱いも整理が要ります。廃棄物処理法施行令27条1項5号は、収集運搬業の許可事務を原則として都道府県知事に残したうえで、①一つの指定都市・中核市の管轄区域内のみで収集運搬を行う場合と、②積替えを行う区域における収集運搬については、指定都市・中核市の長が許可を出す構造にしています。県内を広く走るなら県知事の許可だけで足りる一方、積替え保管を組み込むと窓口が変わり得る、と理解しておくと依頼者への説明がぶれません。
要件は「施設」と「能力」の2本立て
許可基準の中身は法律ではなく省令にあります。廃棄物処理法施行規則10条が、施設に係る基準と申請者の能力に係る基準の2つを定めています。条文自体は数行しかなく、読んだだけでは何を出せばよいのか分からないのが特徴です。
- 施設基準:産業廃棄物が飛散し、流出し、悪臭が漏れるおそれのない運搬車、運搬船、運搬容器その他の運搬施設を有すること
- 施設基準(積替施設がある場合):飛散・流出・地下浸透・悪臭の発散を防ぐために必要な措置を講じた施設であること
- 能力基準:産業廃棄物の収集又は運搬を的確に行うに足りる知識及び技能を有すること
- 能力基準:産業廃棄物の収集又は運搬を的確に、かつ継続して行うに足りる経理的基礎を有すること
実務上、この「知識及び技能」を証明する手段として定着しているのが講習会の修了証です。規則9条の2第2項4号は添付書類として「当該事業を行うに足りる技術的能力を説明する書類」を求めており、多くの自治体がここに修了証の写しを求めます。一方の「経理的基礎」は直前3年分の決算書と納税関係書類で見られるため、赤字や債務超過が続いている法人では追加の説明資料を求められる可能性があることを、受任前に伝えておくべきです。
講習会は課程ごとに料金も時間も違う
講習会を実施しているのは公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターです。新規許可を目指す場合は処理業(新規)講習会の収集・運搬課程を受講します。2026年8月時点で同センターが公表している課程と受講料(税込)は次のとおりです。
| 課程 | 主な対象 | オンライン形式 | 対面形式 |
|---|---|---|---|
| ア 産収(産業廃棄物 収集・運搬課程/新規) | 産廃収集運搬業の許可を新たに受けようとする方 | 27,500円 | 33,000円 |
| エ 特収(特別管理産業廃棄物 収集・運搬課程/新規) | 特管産廃収集運搬業の許可を新たに受けようとする方 | 40,700円 | 51,700円 |
| キ 収運(収集・運搬課程/更新) | 収集運搬業の許可の更新を受けようとする方 | 17,600円 | 22,000円 |
オンライン形式は会社や自宅で講義動画を視聴し、後日会場で修了試験を受ける2段階方式、対面形式は会場で講義を受けてその場で試験を受ける方式です。学習量も違い、新規の産収課程は5科目・12時間、更新の収運課程は4科目・6時間とされています。申込みはWebからのみで、本人確認用の顔写真データが必要です。
なお「エ 特収」の修了証は、特別管理産業廃棄物収集運搬業だけでなく通常の産業廃棄物収集運搬業の許可申請にも使えるとされています。ただしセンターは許可申請の種類と修了証のページで、修了証の取扱いは都道府県・政令市ごとに異なる場合があるため、申込み前に申請先へ確認するよう注記しています。有効期限と同じく自治体差のある論点です。
将来的に感染性廃棄物や引火性の廃油といった特別管理産業廃棄物を扱う構想がある依頼者なら、最初から特収を選ぶ提案もあり得ます。ただし特管産廃となる廃油の範囲は狭く、施行令2条の4第1号と施行規則1条の2第1項により、特別管理産業廃棄物に当たる廃油は揮発油類・灯油類・軽油類に限られます。タールピッチ類や廃食用油、潤滑油は通常の産業廃棄物です。取り違えると、産収27,500円で足りる依頼者に40,700円の特収を受けさせてしまいます。
受講資格に学歴・実務経験・国籍の要件はありませんが、講義と修了試験はすべて日本語のみで行われます。外国籍の依頼者が代表者となるケースでは、ここが実質的なハードルになります。
修了証は誰が取り、いつまで使えるのか
受講するのは会社ではなく個人です。センターの受講対象者の案内では、申請者が法人の場合は法人の代表者、その業務を行う法人の役員、または業を行おうとする区域にある事業場の代表者が受講する必要があるとされています。個人の場合は申請者本人または事業場の代表者です。「担当の事務員に受けさせておきます」という相談には、その位置づけを確認してから答える必要があります。
修了証の有効期限も重要です。センターは、修了証の有効期限のページで、許可申請書に添付する場合、多くの自治体では新規講習会修了証は修了の日から起算して5年間としつつ、都道府県・政令市によって取扱いが異なる場合があるとはっきり注記しています。年数を断定せず、申請先に確認する前提で進めてください。
もう一つの落とし穴が更新講習会です。処理業(更新)講習会の修了証は、原則として更新許可申請・変更許可申請に使うものです。他の都道府県・政令市で既に許可を受けていて同内容の新規許可申請をする場合には、更新講習会修了証の写しと他自治体の許可証の写しの添付で新規講習会修了証に代えられるとされていますが、これも自治体の取扱い次第です。逆に、過去に新規講習会を修了していない事業者が更新を迎えた場合、新規講習会を受けるよう指導されることがある点も押さえておきましょう。
添付書類と手数料は着手前に洗い出す
申請書の様式と添付書類は規則9条の2に列挙されています。事故が起きやすいのは、依頼者本人が想定していない書類です。主なものを整理します。
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01
技術的能力 当該事業を行うに足りる技術的能力を説明する書類。講習会修了証の写しがここに入ります
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02
経理的基礎 法人は直前3年の各事業年度における貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表と、法人税の納付すべき額および納付済額を証する書類。個人は資産に関する調書と直前3年の所得税に関する同様の書類
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03
施設関係 運搬施設や積替え・保管場所の構造を明らかにする図面と付近の見取図、およびその施設の所有権(所有権がない場合は使用する権原)を証する書類
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04
欠格要件 法人なら役員の住民票の写しなど。発行済株式総数の5%以上の株式を持つ株主・出資者がいる場合は、その者の分も必要です
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05
誓約書 申請者が法14条5項2号イからヘまでに該当しない者であることを誓約する書面
5%以上株主の資料は、依頼者が「役員の分だけでよい」と思い込んでいることが多く、着手後に判明すると回収が長引きます。初回ヒアリングで役員名簿と株主名簿を必ず突き合わせてください。回収そのものの設計は依頼者への書類依頼の伝え方や書類回収の効率化の考え方が流用できます。
手数料は各自治体の条例で決まりますが、地方公共団体の手数料の標準に関する政令が標準額を示しています。都道府県ごとに申請が必要になるため、複数県の同時申請では実費が積み上がります。見積書の書き方でも触れられるとおり、実費と報酬は分けて提示するのが安全です。
| 申請の種類 | 標準額 |
|---|---|
| 産業廃棄物収集運搬業の許可(新規) | 81,000円 |
| 同 許可の更新 | 73,000円 |
| 同 事業の範囲の変更許可 | 71,000円 |
| 特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可(新規) | 81,000円 |
| 同 許可の更新 | 74,000円 |
| 同 事業の範囲の変更許可 | 72,000円 |
有効期間5年、優良認定なら7年
許可の有効期間は、新たに許可を受けた者と通常の更新を受けた者が5年、優良産廃処理業者に該当するものとして更新を受けた者が7年です(施行令6条の9)。優良認定の基準は施行規則9条の3にあり、一定の行政処分を受けていないこと、事業情報をインターネットで公表し所定の頻度で更新していること、ISO14001または一般財団法人持続性推進機構の認証を受けていること、電子マニフェストに対応していること、自己資本比率などの財務要件、法人税等・社会保険料・労働保険料を滞納していないこと、といった項目が並びます。
ハードルは決して低くありませんが、更新の相談を受けたときに「7年に延ばす道もある」と提示できると、単なる代行との差が出ます。情報公表の実務は産業廃棄物処理事業振興財団が運営する仕組みを通じて行われています。
なお、更新申請をしたのに有効期間の満了日までに処分がされない場合、従前の許可は処分がされるまでなお効力を有します(法14条3項)。ただしこれは行政側の審査が長引いた場合の救済であって、期限管理を怠ってよい理由にはなりません。5年サイクルの案件は更新管理の仕組みを先に作らないと、件数が増えた瞬間に取りこぼします。
受任前に確認したい周辺論点
建設業の依頼者では、法21条の3の理解が欠かせません。建設工事が数次の請負によって行われる場合、その工事に伴い生ずる廃棄物の処理については、原則として元請業者を事業者(排出事業者)とすると定められています。一定の廃棄物について、書面による請負契約で定めるところにより下請負人が自らその運搬を行う場合には下請負人を事業者とみなす例外がありますが、対象は環境省令で限定されています。「下請だから許可は要らない」と単純化しないことです。建設業許可とセットで相談が来る場面については建設業許可のチェックリストも併せて確認してください。
また、事業者が自らその産業廃棄物を運搬する場合や、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集運搬を業として行う者は、許可の対象外とされています(法14条1項ただし書)。この「専ら再生利用の目的となる産業廃棄物」は条文に列挙がなく、実務では昭和46年10月16日環整第43号(旧厚生省通知)が示した古紙・くず鉄(古銅等を含む)・あきびん類・古繊維の4品目を指すものとして運用されています。ただし個別の該当性判断には自治体差があるため、申請先に確認してください。
標準処理期間や、必要な誓約書・様式の細部は自治体ごとに異なります。申請先の手引きを最新版で入手するのが前提で、所轄部署はセンターの都道府県・政令市の所轄部署一覧から辿れます。産廃を専門領域に据えるかどうかを検討している段階なら、専門分野の選び方も参考になるはずです。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可は、条文自体は短いのに実務の分岐が多い許認可です。まず押さえるべきは、許可の単位が「積卸しを行う区域を管轄する都道府県知事」であること、そして積替え保管や政令市内で完結する案件では窓口が変わり得ることです。ここを外すと見積りの根拠から崩れます。
要件は施設基準と能力基準の2本立てで、能力基準のうち「知識及び技能」を担保するのが講習会修了証です。新規の収集・運搬課程はオンライン27,500円・対面33,000円、更新の収集・運搬課程はオンライン17,600円・対面22,000円(いずれも2026年8月時点の公表額・税込)。受講するのは代表者・役員・事業場の代表者であって、担当者ではありません。
修了証の有効期限について、センター自身が「多くの自治体では修了の日から起算して5年間」という書き方をし、自治体差があると注記しています。年数を断定せず、申請先に確認する姿勢をそのまま依頼者にも共有してください。更新講習会の修了証を新規申請に使えるかどうかも同じ性質の論点です。
そして許可は5年サイクルで回り、しかも複数自治体に分散します。件数が増えるほど、期限と自治体の組み合わせを記憶や表計算で管理するのは危険になります。専門特化を狙うなら、受任の入口と受任後の期限管理を最初からセットで設計しておくことをおすすめします。
Q. 収集運搬業の許可は、トラックが通過するだけの都道府県でも必要ですか。
A. 廃棄物処理法14条1項は、運搬のみを業として行う場合の許可の区域を「産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る」としています。したがって、積むことも卸すこともせず通過するだけの都道府県について、収集運搬業の許可を別途取得する必要は生じない構造です。ただし積替えを行う場合は扱いが変わりますし、具体的な運用は申請先の自治体に確認してください。
Q. 講習会は従業員が受講してもよいのですか。
A. 日本産業廃棄物処理振興センターの案内では、申請者が法人の場合は法人の代表者、その業務を行う法人の役員、または業を行おうとする区域にある事業場の代表者が受講する必要があるとされています。個人の場合は申請者本人または事業場の代表者です。単なる担当者の受講では要件を満たさない可能性が高く、都道府県・政令市によって取扱いが異なる場合もあるため、申込み前に申請先へ確認するのが安全です。
Q. 新規講習会の修了証は何年間使えますか。
A. 同センターは、許可申請書に添付する場合について「多くの自治体では講習会修了の日から起算して新規講習会修了証は5年間とされています」と説明し、あわせて都道府県・政令市によって取扱いが異なる場合があると明記しています。5年と断定せず、申請先の運用を確認してください。なお、主務大臣の認定申請書に添付する場合の有効期限は修了の日から起算して5年間とされています。
Q. 更新講習会の修了証で、新規許可申請はできますか。
A. 原則としてできません。更新講習会の修了証は更新許可申請・変更許可申請に使うものです。例外として、他の都道府県・政令市で既に許可を受けている場合で同内容の新規許可申請をするときは、更新講習会修了証の写しと他自治体の許可証の写しの添付をもって新規講習会修了証に代えることができるとされていますが、取扱いは自治体ごとに確認が必要です。
Q. 許可の有効期間を7年にできると聞きましたが、どういう条件ですか。
A. 廃棄物処理法施行令6条の9により、許可の更新を受ける際に「優れた能力及び実績を有する者」として環境省令で定める基準に適合すると認められた場合、有効期間が7年になります。基準は施行規則9条の3に定められており、一定の行政処分を受けていないこと、所定の事業情報をインターネットで公表していること、ISO14001または一般財団法人持続性推進機構の認証を受けていること、電子マニフェストに対応していること、自己資本比率などの財務要件、法人税等・社会保険料・労働保険料を滞納していないことなどが並びます。新規許可では7年にはなりません。
5年後にもう一度会うための、連絡先の残し方
産業廃棄物収集運搬業の許可は5年、優良認定を受けても7年で更新が来ます。その頃には先方の担当者も、当時使っていた連絡手段も変わっていることが珍しくありません。RenRakuは顧客カードに担当者や連絡先、許可取得時の経緯を残し、LINEとメールのやり取りを同じタイムラインで保持します。講習会修了証の有効期限のような顧客ごとの日付は、タスク管理(スタンダードプラン以上)に置いておけます。更新前の声かけ自体は事務所側で行いますが、誰にいつ何を伝えたかが残っていれば、話の入り方が変わります。
更新の時期まで、履歴を持ち越す
RenRakuは顧客カードに担当者と連絡先を残し、タイムラインで当時の経緯をさかのぼれます。ライトプランは月額1,480円(税抜)、14日間は無料・カード登録不要です。
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※ 本記事は執筆時点(2026年8月)の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。受講料や取扱いは変更される場合があり、許可の要件・添付書類・手数料・標準処理期間は都道府県・政令市によって異なります。実際の申請にあたっては、必ず申請先の自治体が公表する最新の手引きおよび日本産業廃棄物処理振興センターの案内をご確認ください。