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決算変更届は建設業法11条2項の法定義務

建設業許可には、5年ごとの更新とは別に、毎年必ず回ってくる届出があります。決算変更届(事業年度終了届)です。建設業法11条2項は「許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない」と定めています。

名指しされている6条1項1号は工事経歴書、2号は直前3年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面です。条文が直接指定しているのはこの2点だけで、財務諸表や納税証明書は「その他国土交通省令で定める書類」として上乗せされる構造になっています。届出の中身が行政庁ごとに少しずつ違うのも、この省令と運用の層があるためです。呼び名も「決算変更届」「決算報告」「事業年度終了届」と統一されていません。関東地方整備局の手引きは同一文書内で「決算変更届」と「決算報告(=事業年度終了届)」を併用しており、東京都も「決算報告」と「決算変更届」の両方を使っています。

期限は「毎事業年度経過後四月以内」なので、3月決算なら7月31日、12月決算なら4月30日です。個人事業主は事業年度が暦年のため、所得税の確定申告を終えた直後が期限になります。なお11条3項では、使用人数を記載した書面などの記載事項に変更が生じたときも同じく4か月以内の届出とされています。

毎年・全顧問先で必ず発生する定型業務なので顧問契約の柱に据えやすい反面、期限管理を仕組みにしていない事務所ほど取りこぼします。許認可更新案件のリマインド運用と同じ台帳で回すのが現実的です。

毎年出す書類の構成|条文の2点に何が乗るか

実際に綴じる書類は下表のとおりです。国土交通大臣許可(関東地方整備局)の手引きの構成を基準に整理しています。様式の名称・部数・綴じ方は行政庁により異なりますので、管轄庁の手引きで必ず突き合わせてください。

書類位置づけ・注意点
変更届出書(別紙8)届出の鏡。建設業許可事務ガイドラインで定める全国共通の様式で、大臣許可・東京都知事許可とも同じ別紙8を使用します。ただし添付様式の綴じ方・部数・受付印の取扱いは行政庁により異なります
様式第2号 工事経歴書法6条1項1号。届出時点で許可を受けている全業種について作成
様式第3号 直前3年の各事業年度における工事施工金額法6条1項2号。工事経歴書の業種別合計と数字を一致させる
様式第15号 貸借対照表/様式第16号 損益計算書(法人)、様式第18号 貸借対照表/様式第19号 損益計算書(個人)建設業法様式への組替えが必要。法人の損益計算書には完成工事原価報告書が付く(施行規則10条1項1号・2号)
株主資本等変動計算書・注記表法人のみ
事業報告書特例有限会社を除く株式会社のみ。任意様式で、記載事項は会社法施行規則が定める
様式第17号の3 附属明細表特例有限会社を除く株式会社のうち、資本金1億円超、または最終事業年度の貸借対照表の負債合計200億円以上の場合
納税証明書大臣許可では法人税(法人)・所得税(個人)の納付すべき額及び納付済額を証する書面(施行規則10条1項3号/納税証明書その1)。知事許可では事業税の納付すべき額及び納付済額を証する書面(事業税の納税証明書)が必要書類とされています(同項4号)。ただし同条3項により、本人の同意があるときは都道府県知事が提出を省略させることができるため、実際の要否は管轄庁で確認してください

このほか、使用人数(様式第4号)、建設業法施行令3条に規定する使用人の一覧表(様式第11号)、定款は、変更があった場合のみ決算変更届とあわせて提出します(法11条3項、建設業法施行規則10条2項)。関東地方整備局の手引きでは、いずれも決算日時点の内容で作成し、確認資料も決算日時点のものを添付するよう求められています。

注意したいのが健康保険等の加入状況(様式第7号の3)で、これだけは期限の根拠が異なります。建設業法施行規則7条の2第3項は「別記様式第七号の三の記載事項に変更を生じたときは、二週間(当該変更が従業員数のみである場合においては、毎事業年度経過後四月)以内に」提出すべきものと定めています。つまり、変更が従業員数のみの場合に限り決算変更届と同時(毎事業年度経過後4か月以内)で足り、適用事業所の増減や保険加入状況の変更などそれ以外の変更は2週間以内に、変更の内容を証する書類を添えて単独で提出します。決算変更届にまとめようとして期限を落とす典型例なので、資料回収の段階で変更内容を切り分けてください。

なお、常勤役員等や営業所技術者等の変更は2週間以内、商号・営業所・資本金・役員などの変更は30日以内と、別の期限が走っています。決算変更届の準備中に変更漏れが見つかることは多く、その場でどちらの期限に載せるか判断できると顧客の信頼につながります。

工事経歴書|経審の有無で書き方が変わる

最も工数を食うのが工事経歴書です。直前事業年度に完成した建設工事を業種ごとに書き、未成工事は別葉にします。押さえておきたいのは、経営事項審査を受けるかどうかで記載ルールが変わる点です。

  • 01
    経審を受けない場合 業種ごとに、主な完成工事を請負代金の額の大きい順に記載し、続けて主な未成工事を同じ順で記載します。
  • 02
    経審を受ける場合(第1段階) 元請工事に係る完成工事について、元請完成工事高の合計のおおむね7割を超えるところまで、請負代金の額の大きい順に記載します。
  • 03
    経審を受ける場合(第2段階) 続けて、残りの元請工事と下請工事に係る完成工事について、全体の完成工事高合計のおおむね7割を超えるところまで記載します。
  • 04
    記載を要しない部分 第1・第2段階とも、1,000億円を超える部分、または軽微な工事(建設業法施行令1条の2第1項=税込500万円未満、建築一式工事は1,500万円未満、または建築一式工事のうち延べ面積150㎡未満の木造住宅)が10件を超える部分については記載を要しません。
  • 05
    未成工事 上記に続けて、主な未成工事を別葉にして記載します。

細部の指定も落としやすいところです。注文者と工事名に個人名を書かず「A」「A邸○○工事」と記号化する、配置技術者は建設業法26条1項・2項の区分に従って氏名を記載する、金額は千円単位で書く、といった点が手引きに明記されています。工事実績がない年度でも届出義務は残り、関東地方整備局の手引きでは「受注実績なし。」と記載するよう案内されています。

そして業種ごとの最終ページの合計額は、様式第3号の「許可に係る建設工事の施工金額」の計と一致していなければなりません。工事台帳の粒度が粗いと、この突合で必ず止まります。建設業許可申請の書類催促と同じで、依頼時点から「元請・下請の別」「税抜/税込」「配置技術者名」を含む様式で出してもらうと後戻りが消えます。

財務諸表の組替えと、税務との線引き

顧問税理士が作成した決算書をそのまま綴じて提出することはできません。建設業法の財務諸表様式は勘定科目が独自で、売上高は完成工事高、売上原価は完成工事原価、売掛金は完成工事未収入金、買掛金は工事未払金、前受金は未成工事受入金へ組み替えます。建設業以外を兼営していれば、完成工事高と兼業事業売上高を区分表示します。

消費税の扱いも要注意です。経営事項審査の完成工事高は消費税抜きで評価されるため、工事経歴書(様式第2号)と様式第3号は税抜きで作成するのが原則です(両様式に「税込・税抜」の別を明示する欄があります)。財務諸表は会社の経理方式(税込経理/税抜経理)に従いますが、経審申請書の完成工事高と工事経歴書・様式第3号の数字は必ず一致させます。免税事業者の取扱いは行政庁により異なり、東京都のように、税込みで決算変更届を提出している場合に税抜きの工事経歴書・様式第3号を別途求める運用もあるため、管轄庁の説明書を確認してください。処理がばらつくと、経審の段階で差し戻され、決算変更届の訂正まで戻ることになります。

線引きも明確にしておきましょう。決算書そのものの作成や税務申告は税理士の業務であり、行政書士が担うのは、確定した決算数値を建設業法の様式に組み替えて官公署提出書類として整えるところです。数字が固まる前に着手すると作り直しになるため、税理士側の決算確定スケジュールを先に押さえます。

未提出のリスク|罰則・監督処分・更新と経審

建設業法50条1項2号は、11条1項から4項までの規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をして提出したときについて、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金を定めています。同条2項では、情状により拘禁刑と罰金を併科することができるとされています(懲役・禁錮は刑法改正により拘禁刑に一本化されています)。

さらに、11条2項違反は建設業法28条1項の「この法律の規定に違反した場合」に当たり得ます。許可行政庁は必要な指示をすることができ、指示に従わないときは同条3項により1年以内の営業停止を命じることができます。もっとも、顧客に効くのは罰則より次の実害です。

  • 更新申請が進まない:未提出分をすべて出し切らないと更新の手続が進まない運用が一般的です。有効期間満了が迫ってから数期分まとめて、という駆け込み相談は珍しくありません。
  • 経営事項審査が受けられない:経審は決算変更届の提出が前提です。結果通知書の有効期間は審査基準日(原則として直前の決算日)から1年7か月で、届出の遅れは経審と入札参加資格の更新まで連鎖します。
  • 取引先の目に触れる:提出書類は閲覧の対象です。国土交通省は令和5年4月からJCIP電子閲覧システムを運用していますが、インターネットで閲覧できるのはJCIPで電子申請されたものに限られ、紙で提出した書類は閲覧所での閲覧となります(平成27年4月1日以降の提出分は、個人情報を含む書類が閲覧対象から除外されています)。
  • 行政庁からの照会:関東地方整備局の手引きでは、期限内に提出がない場合、提出できない理由と再発防止策の文書報告を求めることがあると案内されています。

提案の場面では「罰則があります」より、更新と経審が止まり、公共工事の受注機会が飛ぶという説明のほうが伝わります。

4か月に間に合わせる事務所側の段取り

決算変更届は、依頼が来てから動くと間に合いません。起点が決算日という動かない日付なので、顧問先の決算月さえ台帳化しておけば1年先まで着手日を機械的に置けます。標準スケジュールは次のようなイメージです。

  • 決算月+1〜2か月:顧問税理士の決算確定見込みを確認し、資料依頼を投げる
  • 決算月+2か月:決算書一式、勘定科目内訳明細書、工事台帳または請求書控え、納税証明書、変更事項(役員・使用人数・社会保険等)を回収する
  • 決算月+3か月:工事経歴書と財務諸表を作成し、様式第3号との突合まで終える
  • 決算月+3.5か月:顧客確認と押印または電子署名を取り、提出する
  • 提出後:受付控えを保管し、翌期の着手日を台帳に自動反映させる

電子申請はJCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)を使います。国土交通省によると令和5年1月から受付が始まっており、ログインにはデジタル庁のgBizIDが必要で、代理申請にも対応しています。運用の細部は行政庁により異なるため、初めての管轄では事前確認を。事務所全体の対応は電子申請対応システムの整理もご覧ください。

この段取りを記憶とExcelだけで回すと、決算月が集中する3月期・9月期で必ず溢れます。決算月を持たせた顧客台帳期限から逆算した自動リマインド回収状況の可視化——この3点をシステムに寄せるだけで担当者の負荷は大きく変わります。必要書類は建設業許可申請の必要書類一覧と重なるため、チェックリストは1本化しておくと軽くなります。

まとめ

決算変更届は建設業法11条2項に基づく法定の届出で、期限は毎事業年度経過後4か月以内です。条文が直接指定するのは工事経歴書と直前3年の工事施工金額の2点で、財務諸表・事業報告書・納税証明書などが省令と各行政庁の運用で上乗せされます。財務諸表の様式は法人と個人で異なり、知事許可では事業税の納税証明書が省令上の必要書類とされている点も押さえどころです。

作業量の中心は工事経歴書と財務諸表です。工事経歴書は経営事項審査を受けるかどうかで記載ルールが変わり、経審を受ける場合は元請おおむね7割・全体おおむね7割の二段構えになります。財務諸表は建設業法様式への組替えが必須で、経審の完成工事高は税抜きで評価されるため、工事経歴書・様式第3号との整合を必ず取ります。

あわせて期限の切り分けも重要です。健康保険等の加入状況(様式第7号の3)は、変更が従業員数のみなら決算変更届と同時、それ以外の変更は2週間以内という別建ての期限が走ります(建設業法施行規則7条の2第3項)。

未提出のリスクは、50条1項2号の罰則(6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)28条に基づく指示・営業停止に加え、更新申請と経営事項審査が止まるという実害です。公共工事を受注している顧客ほど売上に直結します。

事務所側の勝ち筋は、決算月を軸にした期限管理と、回収項目を固定した資料依頼の型を持つことに尽きます。毎年・全顧問先で必ず発生する業務だからこそ、記憶ではなく仕組みで回す価値があります。

Q. 提出期限の4か月目の末日が土日祝に当たる場合はどうなりますか。

A. 期限日が閉庁日に当たる場合は、大臣許可なら行政機関の休日に関する法律2条、知事許可なら地方自治法4条の2第4項により、休日の翌日が期限とみなされます(法律または法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除く)。決算変更届の「毎事業年度経過後四月以内」は建設業法11条2項という法律が定める期間なので、いずれの特例も適用されます。また郵送の場合、届出は行政手続法37条により提出先とされている機関の事務所に到達したときに手続上の義務が履行されたものとされるため、消印日ではなく到達日で判断されるのが原則です。もっとも到達日を狙う運用は事故につながるため、決算月+3.5か月を社内の締切に設定しておくと、この論点自体が発生しません。

Q. 数期分ためてしまっている顧客から相談を受けました。どう進めますか。

A. 古い事業年度から順に、各期の工事経歴書・財務諸表・納税証明書を年度ごとに作成して提出します。過去の決算書と工事台帳がどこまで残っているかで工数が大きく変わるため、受任前に資料の現存状況を確認してください。更新期限が迫っている場合は、更新申請の受付に間に合う日程かを管轄庁に先に確認するのが実務的です。

Q. その事業年度に完成工事がまったくない場合も提出が必要ですか。

A. 必要です。建設業法11条2項の届出義務は工事実績の有無で免除されません。関東地方整備局の手引きでは、工事実績がない場合は工事経歴書に「受注実績なし。」と記載するよう案内されています。記載方法は行政庁により異なる場合があるため、管轄庁の手引きを確認してください。

Q. 決算変更届と一緒に、役員変更などの届出もまとめて出してよいですか。

A. 届出事項ごとに期限が別に定められている点に注意が必要です。商号・営業所・資本金・役員等の変更は30日以内、常勤役員等や営業所技術者等の変更、欠格要件への該当は2週間以内が原則で、決算変更届の4か月を待つと期限を過ぎます。一方、使用人数(様式第4号)の変更のように事業年度経過後4か月以内とされているものは、決算変更届と同時に提出できます。健康保険等の加入状況(様式第7号の3)は建設業法施行規則7条の2第3項により、変更が従業員数のみであれば毎事業年度経過後4か月以内、それ以外の変更は2週間以内と分かれるため、変更内容ごとに切り分けて判断してください。

Q. 決算変更届は電子申請できますか。

A. JCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)を利用できます。国土交通省によると令和5年1月から電子申請の受付が始まっており、ログインにはgBizIDが必要で、行政書士による代理申請にも対応しています。対応している手続の範囲や運用は行政庁により異なる場合があるため、管轄庁の案内を確認してください。

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※ 本記事は2026年8月時点の法令および各行政庁の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別事案の結論を保証するものではありません。提出書類・様式・部数・納税証明書の要否等の運用は許可行政庁により異なるため、実際の届出にあたっては管轄行政庁の最新の手引きをご確認ください。決算書の作成および税務申告は税理士の業務です。

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