「般・特新規」は区分変更ではなく新規申請
建設業許可の申請書には「申請の区分」の欄があり、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインは、新規・許可換え新規・般・特新規・業種追加・更新の5つに整理しています(同ガイドラインは国土交通大臣に係る建設業許可事務の取扱いを定めた通達であり、都道府県知事許可でも概ね同様に運用されていますが、細部の取扱いは申請先の手引きで確認してください)。このうち般・特新規は、一般建設業の許可のみを受けている者が新たに特定建設業の許可を申請する場合、または特定建設業の許可のみを受けている者が新たに一般建設業の許可を申請する場合を指します。
呼び名から「一般を特定に書き換える手続」と受け取られがちですが、実体は新規申請です。建設業法第3条第6項により、同じ業種について特定の許可を受けると、その業種の一般の許可はその時点で効力を失います。書き換えではなく、新しい許可が出て古い許可が消えるという構造になっています。
逆方向には注意が要ります。ガイドラインは、特定の許可のみを受けている者が一部の業種だけ一般に変えたいときは、事前にその一部の特定を廃業させたうえで般・特新規として申請させ、全部の業種を一般に変えたいときは特定を全部廃業させたうえで「般・特新規」ではなく「新規」として申請させる、と明記しています。ここを取り違えると受付段階で差し戻される取扱いが一般的です。
特定建設業が必要になるライン(2025年2月に引上げ)
特定建設業許可が要るのは、建設業法第3条第1項第2号の場面です。発注者から直接請け負った1件の建設工事について、その全部または一部を下請に出すとき、下請代金の総額が政令で定める金額以上になる場合に特定が必要になります。建設業法施行令第2条は、この金額を5,000万円(建築工事業は8,000万円)と定めています。
この金額は令和7年(2025年)2月1日施行の政令改正で、従来の4,500万円・7,000万円から引き上げられたものです。改正前の資料が手元に残っていると古い数字で判定してしまうため、顧問先向けの説明資料は差し替えておきたいところです。なお、ガイドラインは元請負人が提供する材料等の価格は5,000万円に含まないとしています。
| 場面 | 必要な許可 |
|---|---|
| 下請として受注する(金額の大小を問わない) | 一般で足りる |
| 元請だが自社施工のみで下請に出さない | 一般で足りる |
| 元請で下請総額が5,000万円未満(建築一式8,000万円未満) | 一般で足りる |
| 元請で下請総額が5,000万円以上(建築一式8,000万円以上) | 特定が必要 |
同じ5,000万円・8,000万円のラインは、民間工事における施工体制台帳・施工体系図の作成義務(法第24条の8、施行令第7条の4)と監理技術者の設置義務(法第26条第2項)にも連動します。ただし公共工事については、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)第15条第1項の読替えにより、金額にかかわらず下請契約を締結した時点で施工体制台帳・施工体系図の作成義務(および、同条第2項による発注者への写しの提出。ただし、工事現場の施工体制を発注者が情報通信技術を利用する方法により確認できる国土交通省令で定める措置を講じている場合を除く)が生じる点に注意が必要です。「5,000万円未満なら台帳は不要」という説明は、公共工事を受注する顧問先には当てはまりません。
一方で主任技術者・監理技術者の「専任」は別建てです。専任が必要になるのは、施行令第27条第1項各号が列挙する公共性のある施設・工作物に関する重要な建設工事(国・地方公共団体が注文者である工事、鉄道・道路・学校・病院・共同住宅・事務所・工場・倉庫・ホテル等に関する工事。個人住宅の新築など列挙外の工事は対象外)で、かつ請負代金が4,500万円(建築一式9,000万円)以上のものです。なお令和6年12月13日施行の改正で専任義務が合理化され、請負代金1億円未満(建築一式2億円未満)でICT活用等の要件(法第26条第3項ただし書第1号、施行令第28条)を満たす場合には、同一の技術者が2現場まで兼任できます(法第26条第4項、施行令第30条)。数字が近く混同しやすいので、一覧にして持っておくと安全です。
財産的基礎の4要件が最大の関門
般・特新規で最も現実的な関門が財産的基礎です。一般建設業(法第7条第4号)は、自己資本500万円以上・500万円以上の資金調達能力・直前の過去5年間許可を受けて継続営業した実績のいずれかを満たせば足ります。これに対し特定建設業(法第15条第3号)は、国土交通省が示す基準のとおり次の4つをすべて満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 欠損比率 | 欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと |
| 流動比率 | 流動資産÷流動負債×100が75%以上であること |
| 資本金 | 資本金の額が2,000万円以上であること |
| 自己資本 | 自己資本(貸借対照表の純資産合計)が4,000万円以上であること |
判断の基準時は、既存企業は申請時の直前の決算期の財務諸表、新規設立企業は創業時の財務諸表です。ここでガイドラインが1つだけ救済を置いています。直前決算では資本金の基準を満たさなくても、申請日までに増資して2,000万円以上になれば、資本金についてはこの基準を満たしているものとして取り扱うという規定です。裏を返せば、欠損比率・流動比率・自己資本にこの救済はなく、決算を1期回すしかありません。
また、この基準に適合するかは許可を行う際に判断するもので、許可後に基準を割っても直ちに許可の効力に影響しないとされています。ただし更新も「許可」である以上、更新申請時の直前決算で再び4要件が審査されます。特定を維持したい顧問先には、決算のたびに流動比率と欠損の状況を確認する運用を提案しておくと事故が減ります(建設業許可の書類チェックリストも併せて整えておくと確実です)。
特定営業所技術者と指定建設業7業種の壁
令和6年12月13日施行の改正建設業法で、従来の「専任技術者」は営業所技術者(法第7条第2号)、特定建設業のそれは特定営業所技術者(法第15条第2号)という名称に変わりました。役割そのものは変わりませんが、申請書や事務所内の様式・案内文の表記は順次直しておきたいところです。
特定営業所技術者になれるのは、①国土交通大臣が定める国家資格等を有する者、②一般の営業所技術者の要件を満たし、かつ発注者から直接請け負った請負代金4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験を有する者(施行令第5条の3)、③国土交通大臣が①又は②に掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者(法第15条第2号ハ)、のいずれかです。
注意点は2つあります。1つは、施行令第5条の2が定める指定建設業(土木・建築・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種)では②の実務経験ルートが使えず、①に該当する者、または同号ハにより国土交通大臣が①に掲げる者と同等以上と認定した者(大臣特別認定者)に限られること(法第15条第2号ただし書)。もう1つは、指導監督的な実務経験が発注者から直接請け負った建設工事に限られ、下請として施工した経験は算入できないことです。ヒアリング段階でここを詰めておかないと、資料を集めきってから要件不足が判明します。
手数料と有効期間の一本化
般・特新規は新規申請の扱いなので、業種追加や更新より費用が上がります。国土交通大臣許可では登録免許税15万円(登録免許税法別表第一)、都道府県知事許可では地方公共団体の手数料の標準に関する政令が定める標準額で9万円です。同政令は、既に同じ区分(一般同士・特定同士)の許可を受けている業種の追加を5万円、更新を5万円としています。
| 申請区分 | 大臣許可 | 知事許可(政令の標準額) |
|---|---|---|
| 新規・許可換え新規 | 登録免許税 15万円 | 9万円 |
| 般・特新規 | 登録免許税 15万円 | 9万円 |
| 業種追加 | 収入印紙 5万円 | 5万円 |
| 更新 | 収入印紙 5万円 | 5万円 |
知事許可の実額は各都道府県の手数料条例で決まるため、申請先で必ず確認してください。また、般・特新規は業種追加・更新と同時に申請でき、その場合は費用も合算されます。ガイドラインは、業種追加や般・特新規の際に有効期間の残っている他の許可も同時に更新申請すれば、まとめて1件の許可にできる(有効期間の一本化)としています。ただし、同時に更新を申請できるのは、原則として有効期間が6か月以上残っている許可に限られます(同ガイドライン【第3条関係】5(2)ただし書)。残存期間が6か月を切っている許可は一本化に乗せられないため、受任時点で全業種の満了日を確認しておく必要があります(更新期限の管理方法も参考にしてください)。
般・特新規で足をすくわれやすい6点
最後に、般・特新規の相談を受けたときに確認しておきたい点を挙げます。いずれも受任後に判明すると工程が大きく崩れる項目です。
- 特定の許可が下りた瞬間に同一業種の一般許可は失効する(法第3条第6項)。その業種について「一般のまま様子を見る」という選択肢は存在しない
- 資本金2,000万円への増資は商業登記を伴い、登記手続は司法書士の職域。税務上の影響は税理士に確認してもらう前提でスケジュールを逆算する
- 決算変更届(法第11条第2項・毎事業年度経過後4か月以内)が滞っていると、直前決算の財務諸表が整わず申請に着手できない
- 流動比率75%は短期借入金の返済期日や工事未払金の計上時期で大きく振れる。決算期をまたぐと結論が変わりうる
- 特定を取ると元請としての義務が増える。下請代金の支払期日は引渡しの申出日から50日以内(法第24条の6)、施工体制台帳の作成(法第24条の8。公共工事では入契法第15条第1項により金額を問わず必要)、下請負人への指導(法第24条の7)などを取得前に説明しておく
- 電子申請システムJCIPは令和5年1月から稼働している。紙と電子で必要資料や進め方が変わるため、申請先の運用を事前に確認する(電子申請の実務)
まとめ
般・特新規は名称こそ「変更」に見えますが、実体は新規申請です。特定の許可が下りた時点で同一業種の一般許可が失効するという建設業法第3条第6項の構造を押さえておけば、顧客への説明も申請区分の選択も迷いません。
判定のラインは、令和7年2月1日から下請代金の総額5,000万円(建築工事業は8,000万円)です。民間工事の施工体制台帳と監理技術者の設置も同じ金額ですが、公共工事の施工体制台帳は入契法第15条第1項の読替えにより金額を問わず必要です。技術者の現場専任は施行令第27条第1項が列挙する工事に限って4,500万円(建築一式9,000万円)と、近い数字が並びます。改正前の4,500万円・7,000万円で説明してしまう事故が起きやすいので、手控えは新しい数字に差し替えておきましょう。
実務でつまずくのは、ほぼ財産的基礎と特定営業所技術者の2点に集約されます。資本金だけは申請日までの増資で救済されますが、欠損比率・流動比率・自己資本は直前決算がすべてです。指定建設業7業種では実務経験ルートが使えません。着手前のヒアリングでこの2点を潰せるかどうかが、案件の成否を分けます。
行政書士として関与できるのは許可申請とその前提整理までで、増資に伴う登記は司法書士、税務の判断は税理士の領域です(業務範囲の線引き)。役割を明示したうえで、決算期ごとの財務チェックと更新期限の管理という継続的な関与に落とし込めれば、単発の許可申請が顧問関係に育ちます。
Q. 一般建設業許可のまま、下請に5,000万円以上を発注してしまったらどうなりますか。
A. 建設業法第16条は、特定建設業の許可を受けた者でなければ、下請代金の額(複数あるときはその総額)が施行令第2条の金額以上となる下請契約を締結してはならないと定めています。違反は監督処分や罰則の対象となり得るため、契約前に元請としての下請総額の見込みを確認する運用が必要です。金額の判定では、元請負人が提供する材料等の価格は含みません。
Q. 般・特新規で特定の許可が下りたら、もとの一般許可はどうなりますか。
A. 同じ業種については、建設業法第3条第6項により一般建設業の許可が効力を失います。一般と特定を同一業種で併存させることはできません。ただし業種ごとの区分なので、たとえば内装仕上工事業を特定に上げつつ、塗装工事業は一般のまま維持するといった組み合わせは可能です。
Q. 直前決算では資本金が2,000万円に足りません。今から増資して間に合いますか。
A. 建設業許可事務ガイドラインは、直前の決算期の財務諸表では資本金の基準を満たさない場合でも、申請日までに増資を行って基準を満たしたときは、資本金についてはこの基準を満たしているものとして取り扱うとしています。ただしこの取扱いは資本金に限られ、欠損比率・流動比率・自己資本4,000万円には適用されません。なお増資には商業登記が必要で登記手続は司法書士の職域、税務上の取扱いは税理士にご確認ください。
Q. 特定を取得したものの、更新時に財産要件を割ってしまいそうです。
A. 財産的基礎の適合性は許可を行う際に判断され、許可後に基準を割っても直ちに許可の効力に影響するものではないとされています。もっとも更新も許可である以上、更新申請時の直前決算で4要件が改めて審査されます。維持が難しい場合は、当該業種の特定を廃業したうえで一般建設業の許可を申請する(般・特新規、全業種であれば新規)という選択になります。判断には期間を要するため、決算確定の段階で早めに検討してください。
Q. 般・特新規と業種追加・更新を同時に申請できますか。手数料はどうなりますか。
A. 同時申請は可能で、申請区分として「般・特新規+業種追加」「般・特新規+更新」「般・特新規+業種追加+更新」といった組み合わせが用意されています。手数料は各区分の合算で、大臣許可であれば登録免許税15万円に業種追加・更新分の収入印紙5万円が加わる形になります。知事許可の実額は都道府県の手数料条例によるため、申請先で確認してください。同時申請により有効期間の一本化ができますが、同時に更新を申請できるのは原則として有効期間が6か月以上残っている許可に限られる点に注意してください。
決算ごとの確認を、事務所側から声をかけられる状態に
般・特新規は申請して終わりではなく、決算のたびに財産的基礎を見直す話が続きます。ただ、その声かけは顧問先ごとの決算月と前回何を伝えたかが分かっていないと出せません。RenRakuは顧客カードに過去のやり取りとメモを紐づけ、横断検索で「前回どこまで説明したか」を後から引けます。タスク管理(スタンダードプラン以上)に次の確認事項を残しておけば、担当者の記憶に依存せず引き継げます。財務書類の依頼と返事もLINEとメールが同じ画面に並ぶので、どちらに届いても追いかけやすくなります。
決算月ごとの持ち手を、先に決めておく
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※ 本記事は2026年8月時点の法令・通達等に基づく一般的な解説であり、個別の事案について結論を保証するものではありません。金額・要件・手数料は制度改正や都道府県の条例により変わるため、実際の申請にあたっては国土交通省および申請先の許可行政庁の最新情報をご確認ください。登記に関する手続は司法書士、税務に関する判断は税理士の業務範囲です。