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税理士事務所のDXツール選び — 業務別に整理する

2026年、士業業界ではクラウドツールの導入が急速に進んでいます。とくに税理士事務所では、電子帳簿保存法の完全義務化(2024年1月)やインボイス制度の定着を背景に、紙と手作業を前提とした業務フローからの転換が喫緊の課題になっています。

ただ、いざDXに取り組もうとすると「ツールが多すぎて何から手をつけていいかわからない」という壁にぶつかるのではないでしょうか。クラウド会計、税務申告ソフト、顧問先管理、書類回収、チャットツール——それぞれ別のベンダーが提供していて、比較だけでも時間がかかります。

この記事では、税理士事務所の日常業務を記帳・仕訳税務申告顧問先管理書類回収コミュニケーションの5領域に分け、それぞれの領域で使えるツールを具体的に比較します。税理士事務所のDX全体像については税理士事務所のDX・業務効率化ガイドも合わせてご確認ください。

記帳・仕訳 — クラウド会計ソフトの選び方

記帳・仕訳は税理士業務の中で最も工数が大きい領域の一つです。銀行口座やクレジットカードとAPI連携し、取引データを自動で取り込んで仕訳候補を生成するクラウド会計ソフトを導入すれば、手入力にかかる時間を大幅に短縮できます。

MM総研の2025年3月調査によると、個人事業主のクラウド会計ソフト利用率は38.3%(前年比+4.6pt)で、上位3社が93.7%のシェアを占めている状況です。税理士事務所が顧問先に提案する場合も、この3社のいずれかが中心になるでしょう。

サービス法人向け月額(税抜)強み向いている事務所
弥生会計 Nextエントリープラン〜(最大3か月無料)27年連続販売No.1。顧問先がすでに弥生を使っているケースが多い弥生ユーザーの顧問先が多い事務所
freee会計2,980円〜(ひとり法人)法人税申告まで一気通貫。API連携が豊富法人税申告までワンストップで完結させたい事務所
マネーフォワード クラウド2,480円〜(ひとり法人)バックオフィス全体(給与・経費・請求書)の連携に強い顧問先のバックオフィス全体を支援する事務所

どのサービスを選ぶかは、顧問先の構成によって変わります。重要なのは事務所と顧問先で同じソフトを使うことです。同じプラットフォーム上でデータを共有すれば、CSVの受け渡しやデータ変換の手間がなくなり、月次決算のスピードが格段に上がります。すでに顧問先の多くが弥生を使っているならば弥生会計 Next、新規顧問先の開拓にあわせて統一するならfreeeかマネーフォワードを軸にするのが自然な選択です。

記帳自動化の補助ツール — STREAMED

紙の領収書やレシートが中心の顧問先がある場合は、STREAMED(ストリームド)の併用も検討に値します。証憑画像をスキャンするだけで1営業日以内に仕訳データ化されるサービスで、AI-OCRとオペレータの人力補正を組み合わせて高い正確性を実現しています。マネーフォワード クラウドの新規開業プランでは、STREAMEDを半年間・顧問先20社まで無料で利用できる特典があります。

税務申告ソフト — TKC・達人シリーズ・JDLの比較

会計ソフトと税務申告ソフトは別物です。会計ソフトで記帳した決算データを受け取り、申告書を作成・電子申告するのが税務申告ソフトの役割です。税理士事務所では、ここの選定がワークフロー全体の効率を左右します。

ソフト提供元料金目安特徴
TKCシステムTKCTKC会員向け(要問い合わせ)研修・サポート体制が手厚く、組織的な運用に強い。法令遵守機能が充実
達人シリーズNTTデータ税務6本+電子申告セット(料金は構成により異なる)20社以上の会計ソフトと連動。帳票画面がそのまま入力画面
JDL IBEXクラウド組曲JDL税目ごとに購入可(要問い合わせ)税目単位で必要なものだけ購入でき、少人数事務所のコストを抑えやすい
MJSシステムミロク情報サービス要問い合わせ会計・税務・給与の一体型。中〜大規模事務所向け

TKCは会員制のため、入会すれば研修やサポートが手厚く受けられる反面、会員以外は利用できません。会計ソフトもTKC製品で統一する前提になるため、顧問先にもTKCの導入を促す必要があります。逆に、すでにTKC会員であれば税務申告・顧問先管理・電子申告まで一気通貫で完結するため、ツール選定に悩む必要がありません。

TKC以外の環境では、達人シリーズが最も汎用性が高い選択肢です。弥生・freee・マネーフォワードなど主要な会計ソフトとの連動コンポーネントが用意されており、会計ソフトを問わず申告書作成に移行できます。少人数で必要な税目だけ使いたい場合は、JDLが税目ごとの購入に対応しているためコストを絞りやすいでしょう。

顧問先管理 — 属人化を防ぐ情報一元化ツール

税理士事務所では、顧問先ごとの決算期・申告期限・契約内容・過去の対応履歴といった情報を誰でも参照できる状態にしておくことが重要です。担当者の頭の中やエクセルのローカルファイルに情報が閉じていると、急な休みや退職時に引き継ぎが困難になりますよね。

ツール料金特徴
MyKomon月会費制(要問い合わせ)会計事務所専用。顧問先情報200項目登録、日報から報酬・工数の採算分析
ZoooU要問い合わせ税務業務タスクがテンプレート化され自動生成。抜け漏れ防止に強い
kintone1,000円/人〜(税抜)ノーコードで自由にカスタマイズ。士業向けアプリパッケージあり
TKC OMSクラウドTKC会員向け(要問い合わせ)TKC税務ソフトとシームレスに連携

MyKomonは2000年から運営されている会計事務所専用のサービスで、税理士または税理士法人しか契約できない点がユニークです。顧問先の情報管理だけでなく、日報のデータから顧問先ごとの報酬・工数・人件費を一覧表示して採算ラインを見える化できるため、事務所経営の判断材料としても活用できます。

一方、ZoooUは税務業務のタスクをテンプレートから自動生成する機能に特徴があります。「法人税の確定申告」「年末調整」といった定型業務のタスクが自動で立ち上がるため、期限の抜け漏れが起きにくくなります。顧問先数が増えてきてスタッフ間のタスク管理が課題になっている事務所には有力な選択肢です。

汎用ツールで柔軟に構築したい場合は、kintone上に士業事務所の業務マニュアルに沿ったアプリを組む方法もあります。ただし構築に時間がかかるため、すぐに使いたい場合はMyKomonやZoooUのような専用ツールの方が立ち上がりが早いでしょう。

コミュニケーション — 電話・FAXからの脱却

顧問先とのやり取りが電話とFAXに偏っていると、対応履歴が残らず、「言った・言わない」のトラブルが起きやすくなります。チャットツールを導入すれば、やり取りが時系列で記録に残り、ファイル共有もスムーズになります。

Chatwork 国内シェア上位

国内の中小企業・士業事務所に普及率が高く、顧問先にも導入をお願いしやすい。フリープランは組織メンバー100人まで対応(メッセージ閲覧は直近40日以内・件数制限なし)。ビジネスプランは月額700円/人(税抜・年契約)。タスク管理機能も内蔵されているため、簡易的な案件管理にも使えます。

Slack 検索・連携

メッセージの全文検索と外部アプリとの連携が強み。freeeやマネーフォワードの通知をSlackに集約すれば、会計データの変更を即座に把握できます。フリープランでは直近90日分のメッセージ履歴を検索可能。プロプランは月額925円/人(税抜・年契約)。

LINE WORKS LINE連携

個人のLINEとメッセージをやり取りできる唯一のビジネスチャット。顧問先がITに不慣れな場合でも、LINEの操作感で導入障壁が低い。フリープランは30人まで。スタンダードプランは月額450円/人(年契約)。

どのツールを選ぶにしても、ポイントは顧問先全社で統一することです。一部はChatwork、一部はメール、一部はLINEというバラバラの状態では、結局確認の手間が分散するだけで効率化になりません。士業事務所のインボイス管理ガイドでも触れていますが、インボイスの受け渡しもチャットツール経由に統一すると管理がシンプルになります。

導入の優先順位 — 何から始めるべきか

すべてを一度に導入しようとすると、スタッフの学習負荷が高くなりすぎて定着しないリスクがあります。段階的に進めるのが現実的です。

  • 01
    クラウド会計ソフト(最優先) 日常業務で最も触れる頻度が高いため、効果を実感しやすい。まず新規顧問先から導入し、段階的に既存顧問先も移行する
  • 02
    チャットツール(次に導入) 電話対応の時間を削減し、やり取りの履歴を残す。顧問先への導入依頼も「無料で使えるツール」として提案しやすい
  • 03
    書類回収のクラウド化(並行して導入) 確定申告シーズンの書類催促にかかる時間を構造的に削減。DoclyのようなツールでURLを送るだけの書類回収に切り替える
  • 04
    顧問先管理ツール(情報の属人化が顕在化したタイミングで) スタッフが3名以上になったら導入を本格検討。それまではスプレッドシートの共有でも運用は可能
  • 05
    RPAによる定型業務の自動化(応用編) データ転記・帳票作成・ファイル整理など。クラウド会計やチャットツールの運用が安定してから取り組むのが無難

ツール選定で見落としがちなのが移行コストです。既存の会計データを新しいソフトに移すには、データ変換・仕訳マッピング・顧問先への説明といった作業が発生します。決算期の直後など、業務の落ち着く時期を選んで移行を進めるのが鉄則です。

Doclyで税理士の書類回収を効率化

税理士業務のDX化を進めるうえで、意外と手つかずになりがちなのが顧問先からの書類回収です。記帳や申告のソフトをクラウド化しても、肝心の原始証憑や確定申告に必要な資料が届かなければ業務は前に進みません。確定申告シーズンには「○○さんの源泉徴収票がまだ届いていない」「医療費の領収書をまとめて送ってほしい」といった催促のメールや電話が積み重なり、本来の税務業務を圧迫しているのではないでしょうか。

Doclyは、こうした書類回収の課題を解決するために設計された士業向けの書類収集SaaSです。

税理士事務所のよくある課題Doclyによる解決
確定申告の書類催促で電話・メールが増えるURLを送るだけで顧問先がスマホから書類をアップロード
誰がどの書類を提出済みか確認できないダッシュボードで顧問先ごとの提出状況をリアルタイム把握
メール添付で届いた書類が受信箱に埋もれる顧問先・案件ごとに書類が自動整理される
マイナンバーなど機密性の高い書類をメールで受け取っている暗号化されたクラウド上でセキュアに受領

顧問先からの書類回収、もっとスマートに

士業向け書類管理SaaS Docly。URLを送るだけで書類依頼が完結。14日間無料。

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税理士事務所のDXツールに関するよくある質問

税理士事務所のDXはどのツールから始めるべきですか?

まずクラウド会計ソフトの導入から始めるのが一般的です。記帳・仕訳の自動化は日常業務の中で最も工数が大きく、効率化の効果が実感しやすい領域です。クラウド会計の運用が安定したら、書類回収のクラウド化やコミュニケーションツールの統一に段階的に進むとスムーズです。

税務申告ソフトはTKC・達人シリーズ・JDLのどれを選ぶべきですか?

事務所の規模と利用形態で選ぶのがポイントです。TKCは研修・サポート体制が充実し組織的な運用に向いています。NTTデータの達人シリーズは20社以上の会計ソフトと連動でき、税務6本セット+電子申告セットで利用可能です(料金はタイトル構成により異なるため公式サイトで要確認)。JDLは税目ごとに購入でき、少人数事務所ではコストを抑えやすい設計です。

小規模な税理士事務所でもDXツールの導入は必要ですか?

必要です。2023年4月施行の改正税理士法(第2条の3)により、税理士にはICT活用が努力義務として課されています。電子帳簿保存法の完全義務化やインボイス制度への対応もあり、規模を問わずデジタル対応は避けられません。小規模事務所であれば、無料プランやトライアルがあるクラウド会計・チャットツールから段階的に始めるのが現実的です。

まとめ — 税理士事務所のDXツール選定チェックリスト

ツールの導入はあくまで手段であり、目的は顧問先へのサービス品質を落とさずに、業務の無駄を構造的に減らすことです。一度に全領域を変えるのではなく、効果の大きい領域から順番に取り組んでいくのが定着への近道です。

  • クラウド会計ソフトの選定
    弥生・freee・マネーフォワードの3社から、顧問先の構成に合ったものを選び、事務所と顧問先で同一プラットフォームに統一する
  • 税務申告ソフトの見直し
    TKC会員ならTKC一択。それ以外は達人シリーズ(汎用性重視)またはJDL(コスト重視)を比較検討する
  • 顧問先管理の仕組みづくり
    スタッフ3名以上なら、MyKomon・ZoooU・kintoneなどの専用ツールで情報の属人化を防ぐ
  • 書類回収のクラウド化
    メール添付・郵送からの脱却。Doclyのようなツールで催促・管理を自動化し、繁忙期の負荷を軽減する
  • チャットツールの統一
    Chatwork・Slack・LINE WORKSから顧問先のITリテラシーに合ったものを選び、全社統一で運用する

※ 本記事は2026年4月時点の情報に基づく一般的な業務改善の考え方です。効果は事務所の規模・業務内容により異なります。
※ 具体的なツール選定は、各事務所の状況に応じてご判断ください。

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