開発許可は「面積」より先に「どの区域か」を見る
開発許可の相談は、建設業許可や農地転用の依頼から派生して持ち込まれることが多い分野です。ところが最初の電話で「何平方メートルから許可が必要ですか」と聞かれても、面積だけでは答えが出ません。都市計画法29条の許可の要否は、その土地がどの区域に属するかを確定させてからでないと判定できないためです。
前提として、同法4条12項は開発行為を「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行なう土地の区画形質の変更」と定義しています。建築や特定工作物の建設を目的としない単なる土砂の搬入や、区画・形・質のいずれも変えない工事は、そもそも開発行為に当たりません。逆に、建築計画とセットで行う造成であれば、規模が小さくても定義には該当します。
許可権者は都道府県知事ですが、指定都市・中核市の区域内では当該指定都市等の長が処分します(29条1項)。事務処理市町村の指定がある場合はさらに窓口が変わるため、案件ごとに国土交通省の開発許可制度の解説と、当該自治体が公表している手引きを突き合わせるのが安全です。
区域区分と規模で決まる許可の要否
規模による適用除外を定めているのは29条1項1号で、対象区域は市街化区域・区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域の3つに限られます。具体的な数値は都市計画法施行令19条が定めています。
| 区域 | 許可が不要となる規模 | 根拠 |
|---|---|---|
| 市街化区域 | 1,000平方メートル未満 | 令19条1項 |
| 東京都特別区の存する区域、及び首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯/近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域/中部圏開発整備法の都市整備区域に区域の全部又は一部が含まれる市町村の区域内の市街化区域 | 500平方メートル未満 | 令19条2項 |
| 区域区分が定められていない都市計画区域 | 3,000平方メートル未満 | 令19条1項 |
| 準都市計画区域 | 3,000平方メートル未満 | 令19条1項 |
| 市街化調整区域 | 規模による除外なし | 法29条1項1号 |
| 都市計画区域及び準都市計画区域外 | 1ヘクタール未満 | 法29条2項・令22条の2 |
表のとおり、市街化調整区域には面積による除外がありません。1号の対象区域に挙げられていないためで、開発行為に当たる限り小規模でも許可が必要になります。ここを取り違えると、着工後に是正を求められる事故につながります。なお表の根拠欄に挙げた令19条1項・2項および令22条の2は、いずれも都市計画法施行令(昭和44年政令第158号)で条文を確認できます。
500平方メートル基準の判定は市町村単位で行われます。令19条2項は市町村(および東京都の特別区の存する区域)を単位に読替えを定めているため、市町村の区域の一部でも該当圏域にかかっていれば、当該市町村の市街化区域は全域が500平方メートル基準になります。対象地が圏域界の内側にあるかを筆単位で調べる必要はありません。加えて令19条1項ただし書は、都道府県等が条例で区域を限り、300平方メートル以上の範囲で規模を引き下げられるとしています。
開発区域が市街化区域・区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域・都市計画区域及び準都市計画区域外の区域のうち2以上の区域にまたがる場合は、令22条の3第1項が、①開発区域の面積の合計が1ヘクタール未満であること、②市街化区域・区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域のうち2以上の区域における開発区域の面積の合計が、それぞれの区域について令19条により許可不要とされる規模のうち最も大きい規模未満であること、③各区域における開発区域の面積がそれぞれ令19条の規模未満であること(3号から5号)のいずれにも該当する場合に限り法29条1項1号を適用するとしています。したがって合計1ヘクタール以上なら除外されず、1ヘクタール未満でも②③を満たさなければ許可が必要です。たとえば市街化区域800平方メートルと区域区分が定められていない都市計画区域2,500平方メートルにまたがる合計3,300平方メートルの案件は、1ヘクタール未満でも②(最も大きい規模=3,000平方メートル)を満たさないため許可が必要になります。なお同条は市街化調整区域にまたがる場合を対象としておらず、市街化調整区域にかかる部分は常に許可の対象です。数値は条例で異なるため、必ず所管課の手引きで確認してください。
定義に当たっても許可が要らないケース
29条1項は1号の規模要件のほか、2号から11号までの適用除外を並べています。実務で当たりやすいのは、市街化調整区域等における農業・林業・漁業用の建築物とその業務を営む者の住宅(2号)、駅舎・図書館・公民館・変電所など施行令21条が列挙する公益上必要な建築物(3号)、都市計画事業・土地区画整理事業・市街地再開発事業などの施行として行うもの(4号から8号)、非常災害の応急措置(10号)、通常の管理行為や軽易な行為(11号)です。
注意したいのは、29条の許可が不要でも他法令の手続まで消えるわけではない点です。農地であれば農地法の許可や届出が並行しますし(農地転用許可の記事で整理しています)、宅地造成等工事規制区域内なら盛土規制法の手続、市街化調整区域で建物だけを建てるなら43条の建築許可が別に必要になります。
相談段階では「開発行為に当たるか」「除外に当たるか」「他法令はどうか」を分けて確認し、判定の根拠にした条文と号数をメモに残しておくと、後の設計変更や自治体との協議で説明が早くなります。
提出物は「申請書・設計・添付図書」の3層
30条1項が申請書の記載事項として挙げるのは、開発区域の位置・区域・規模、予定建築物等の用途、開発行為に関する設計、工事施行者、その他国土交通省令で定める事項の5つです。5号の中身は施行規則15条で、工事の着手予定年月日と完了予定年月日、開発行為の別、市街化調整区域内なら34条の該当号とその理由、資金計画が並びます。
3号の「設計」は、都市計画法施行規則16条2項により設計説明書と設計図で定めます。主として自己の居住の用に供する住宅の建築目的の開発行為だけは設計図のみで足ります。設計説明書には設計の方針、開発区域内の土地の現況、土地利用計画、公共施設の整備計画(管理者となるべき者と用地の帰属に関する事項を含む)を記載します(同条3項)。
| 設計図の種類 | 縮尺 | 主な留意点 |
|---|---|---|
| 現況図 | 2,500分の1以上 | 等高線は2メートルの標高差。樹木・表土の状況は1ヘクタール以上の場合に記載 |
| 土地利用計画図 | 1,000分の1以上 | 公共施設の位置・形状、予定建築物等の敷地形状と用途、緩衝帯の位置 |
| 造成計画平面図 | 1,000分の1以上 | 切土・盛土をする部分、がけ又は擁壁の位置、道路の幅員と勾配 |
| 造成計画断面図 | 1,000分の1以上 | 高低差の著しい箇所について作成 |
| 排水施設計画平面図 | 500分の1以上 | 排水区域の区域界、勾配、吐口の位置、放流先の名称 |
| 給水施設計画平面図 | 500分の1以上 | 排水施設計画平面図にまとめて図示してもよい。主として自己の居住の用に供する住宅の建築目的の開発行為では作成不要(規則16条4項ただし書) |
| がけの断面図 | 50分の1以上 | 切土2メートル超・盛土1メートル超・切盛同時2メートル超のがけが対象 |
| 擁壁の断面図 | 50分の1以上 | 材料の種類と寸法、裏込めコンクリート、透水層、基礎ぐいまで明示 |
これとは別に、30条2項と施行規則17条が添付図書を定めています。開発区域位置図(5万分の1以上の地形図)、開発区域区域図(2,500分の1以上)、33条1項14号の相当数の同意を得たことを証する書類、設計図の作成者が規則19条の資格者であることを証する書類などです。設計図には作成者の氏名を記載しなければなりません(規則16条6項)。
工程を左右するのは32条の同意と協議
32条1項は、開発行為に関係がある公共施設の管理者とあらかじめ協議し、その同意を得ることを求めています。既存の道路・水路・公園などが対象で、同意書がそろわなければ申請は前に進みません。2項は、工事により新たに設置される公共施設を管理することとなる者その他政令で定める者との協議です。令23条により、開発区域が20ヘクタール以上の場合は義務教育施設の設置義務者と水道事業者が、40ヘクタール以上の場合はさらに一般送配電事業者・配電事業者・一般ガス導管事業者・鉄道事業者等が協議相手に加わります。いずれも同意までは求められませんが、協議の経過を示す書面の添付が必要です(法30条2項)。
さらに33条1項14号は、開発行為の施行の妨げとなる権利を有する者の相当数の同意を求めています。土地所有者、地上権者、賃借人などが対象で、共有地や相続が未処理の土地が絡むと収集に数か月かかることも珍しくありません。ここが実質的にスケジュールを決めるため、受任時点で権利者を洗い出しておきたい項目です。
設計図書の作成者資格にも制約があります。31条と施行規則18条により、開発区域の面積が1ヘクタール以上の工事は規則19条の資格を持つ者が作成した設計図書でなければならず、20ヘクタール以上ではさらに要件が加重されます。行政書士が単独で完結する案件ではないため、測量設計事務所や建築士事務所との連携体制が前提になります。
処分そのものは35条が「遅滞なく」と定めるだけで、法定の処理期間はありません。標準処理期間は、行政手続法6条により行政庁が定めるよう努め、定めたときは公にしておくものとされています。所管自治体が公表していればその値を、公表がなければ窓口で目安を確認したうえで工程を組み立てます(報酬設定の考え方もあわせて参考にしてください)。
市街化調整区域と災害ハザードエリア
市街化調整区域では33条の技術基準に加えて34条の立地基準を満たす必要があり、各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ知事は許可できません。どの号で組み立てるかが案件の成否を分けます。
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01
34条1号 開発区域の周辺に居住している者の日常生活のため必要な物品の販売・加工・修理等を営む店舗や事業場など
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02
34条10号 地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合する建築物等の建築目的で行う開発行為
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03
34条11号 市街化区域に隣接・近接し、おおむね50以上の建築物が連たんする地域のうち条例で指定した区域内の開発行為
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04
34条12号 市街化を促進するおそれがないとして、条例で区域・目的・予定建築物等の用途を限り定められたもの
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05
34条13号 線引き(区域区分の決定・市街化調整区域の拡張)の際に権利を有していた者が、決定・変更の日から6か月以内に届出をし、かつ決定・変更の日から起算して5年以内に行う開発行為(法34条13号、令30条)
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06
34条14号 開発審査会の議を経て、知事が市街化を促進するおそれがないと認める開発行為
災害リスクの扱いは、令和4年4月1日施行の改正で厳しくなりました。33条1項8号は、災害危険区域・地すべり防止区域・土砂災害特別警戒区域・浸水被害防止区域、および施行令23条の2が定める急傾斜地崩壊危険区域を開発区域に含まないことを求めています。ただし同号ただし書により、開発区域及びその周辺の地域の状況等により支障がないと認められるときは例外が認められるため、レッドゾーンがかかる案件でも所管課との事前相談で可否を確認する余地はあります。改正後は、主として自己の居住の用に供する住宅の建築目的以外の開発行為がすべて対象です。34条11号・12号の条例区域からも災害リスクの高いエリアが原則として除かれています(東京都都市整備局の解説)。
許可が下りてからも手続は続く
工事が完了したら36条1項の届出を行い、検査に適合すれば検査済証が交付され、知事が完了公告をします。公告があるまでは原則として建築物を建築できず(37条)、公告後も予定建築物等以外の建築物を新築したり、用途を変更したりすることはできません(42条)。用途地域が定められていない区域では、41条により建蔽率や高さの制限が付されることもあります。
盛土規制法との関係も押さえておきたいところです。宅地造成等工事規制区域の指定後に29条1項・2項の許可を受けた宅地造成・特定盛土等については、同法15条2項により12条1項の許可を受けたものとみなされます。完了検査についても17条3項が読み替えを定めていますが、18条の中間検査や19条の定期報告はみなしの対象外で、規模によっては別途の対応が必要です。特定盛土等規制区域については34条2項・27条5項に同様の規定があります。
行政書士の関与範囲は、行政書士法1条の3の書類作成と、1条の4第1項1号の提出手続の代理です。設計図の作成は、開発区域の面積が1ヘクタール以上の工事について都市計画法31条・規則18条の資格制限がかかり、1ヘクタール未満でも勾配・擁壁・排水計算などの技術的検討が伴います。測量業務にも別の規律があります。どこまでを自分が担い、どこから外部に出すかを、受任時の契約書と見積書で明示しておくと後の齟齬を避けられます(業際の整理も参考にしてください)。
開発許可は、同意の取得先・図面の版数・協議記録が案件ごとに膨れ上がる典型的な長期案件です。誰の同意が未取得か、どの図面が最新か、次の期限はいつかを一覧で押さえられる仕組みがあるかどうかで、差し戻しの回数と滞留日数が変わります。
Q. 市街化調整区域では、小さな面積でも開発許可が必要ですか。
A. 規模による適用除外を定めた都市計画法29条1項1号の対象区域は、市街化区域・区域区分が定められていない都市計画区域・準都市計画区域の3つで、市街化調整区域は含まれていません。したがって、開発行為に当たる限り面積を理由に除外されることはありません。ただし同項2号の農林漁業用建築物や3号の公益上必要な建築物など、目的による除外は市街化調整区域でも適用されます。
Q. 造成計画平面図などの設計図は、行政書士が作成できますか。
A. 都市計画法31条と施行規則18条により、開発区域の面積が1ヘクタール以上の工事に係る設計図書は、規則19条の資格を有する者が作成したものでなければなりません。1ヘクタール未満でも、勾配・擁壁・排水計算などの技術的な検討が伴うため、実務では測量設計事務所や建築士事務所と分担するのが一般的です。受任前に役割分担を明確にしておくことをおすすめします。
Q. 開発許可の申請手数料はいくらですか。
A. 開発許可の手数料について全国一律の金額を定めた政令はなく、都道府県・指定都市等の条例で定められています。実務上は自己居住用0.1ヘクタール未満で8,600円といった共通の水準を採る自治体が多い一方、東京都のように独自に改定している例もあります。金額・区分はあくまで条例次第なので、見積り作成時は必ず所管自治体の条例または手引きで最新の額を確認してください。
Q. 開発許可を受ければ、盛土規制法の許可は不要になりますか。
A. 宅地造成等工事規制区域の指定後に都市計画法29条1項・2項の許可を受けた宅地造成・特定盛土等については、盛土規制法15条2項により同法12条1項の許可を受けたものとみなされます。完了検査も17条3項で読み替えられます。ただし18条の中間検査と19条の定期報告はみなしの対象ではないため、規模によっては別途の手続が必要です。特定盛土等規制区域については34条2項・27条5項に同趣旨の規定があります。
Q. 許可後に計画を変更したい場合の手続は何ですか。
A. 都市計画法35条の2第1項により、30条1項各号に掲げる事項を変更するときは原則として変更の許可が必要です。ただし、変更後の開発行為が29条1項各号に掲げる開発行為に該当することとなる場合(29条2項の許可に係るものでは同項の政令で定める規模未満となる場合または同項各号に該当する場合)は許可不要です。また国土交通省令で定める軽微な変更にとどまる場合も許可は不要で、この場合は同条3項の届出で足ります。変更後の工事が31条の対象となる場合には設計者の資格が、公共施設に関する事項の変更がある場合には32条の同意・協議が、それぞれ準用される点にも注意が必要です。
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※ 本記事は執筆時点(2026年8月)の法令に基づく一般的な情報提供であり、個別事案への適用を保証するものではありません。開発許可の規模基準・手数料・標準処理期間・技術的細目の強化緩和などは自治体の条例や運用により異なります。実際の申請にあたっては、所管自治体の手引きおよび担当窓口で最新の取扱いをご確認ください。