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「補助者登録」の実体は行政書士会への届出

補助者を置くことは、国の免許や登録の制度ではありません。根拠条文は行政書士法施行規則第5条で、「行政書士は、その事務に関して補助者を置くことができる」とし、置いたとき又は補助者に異動があったときは遅滞なく、その者の住所及び氏名を行政書士会に届け出なければならないと定めています。置かなくなったときも同じです。法令が求めているのはここまでで、届出先は所属する単位会になります。

一方で、実際に提出する様式、添付書類、手数料、補助者証の有効期間といった運用は、各単位会が定める補助者規則で決まります。日本行政書士会連合会が準則(モデル規則)を示し、各会がそれを土台に独自の規定を置いている構造です。準則自体も令和7年1月16日の理事会で改定されており、改定前の内容を前提にした解説と自分の会の規則が食い違うことは珍しくありません。最初に読むべきは、所属会の補助者規則そのものです。

補助者の法的な立ち位置は、行政書士法第19条の3にいう「行政書士又は行政書士法人の使用人その他の従業者」です。東京都行政書士会の規則第2条は、補助者を「同条の使用人その他の従業者のうち施行規則第5条に定める者であって、会員の指揮命令及び監督を受けて、業務に関する事務を補助する事務に従事する者」と定義し、日行連の準則第2条は「当該会員の指揮命令を受けて」と定めています。補助する者であって業務そのものを行う者ではない、という前提がここで確定します。

任せられる事務と、任せてはいけない領域

施行規則第4条は「行政書士は、その業務を他人に行わせてはならない」と定め、例外として使用人である行政書士に行わせる場合と、依頼人の同意を得て他の行政書士・行政書士法人に行わせる場合だけを挙げています。補助者はこの例外に含まれません。作成した書類には行政書士が記名し職印を押す(施行規則第9条第2項)ことからも、名義と判断は行政書士から動かせないことが読み取れます。

    任せやすい事務資料の受領と整理、下書きの入力、控えの管理、進捗連絡といった判断を伴わない定型事務が中心になります。
    動かせない部分受任の可否、書類の完成と記名・職印、相談への回答は行政書士本人の領域です。補助者が実質的に単独で受任・作成すれば法第19条第1項(業務の制限)に触れ、第21条の2で1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象となり得ます。
    職務上請求書日行連の購入時誓約書は「使用人である行政書士に使用させる場合又は使者として補助者を用いる場合を除き、他人に使用させません」と定めています。補助者は使者にとどまり、請求の要否や記載内容の判断は行政書士が行います。
    入管の申請取次申請等取次ぎは、所属単位会を通じて地方出入国在留管理局へ届出をした行政書士本人が行うものです。補助者は取次者になれません
    業務停止処分中東京都行政書士会の補助者規則第5条第3項は、会員が業務の禁止又は停止処分を受けたときは補助者にも業務に関する事務を行わせてはならないとしています。

官公署の窓口へ書類を持参する場面では、行政書士の使者として補助者が動くことがあり、東京会は補助者に補助者証を常に携帯させること(規則第9条第4項)に加えて、補助者章を常に着用させることも義務づけています(規則第9条の2第1項。日行連の準則第10条も同旨)。補助者を廃止したときは、着用させていた補助者章を返却させる必要があります(同条第2項)。ただし窓口によっては本人出頭を求める運用もあるため、提出前に提出先の取扱いを確認しておくと手戻りがありません。業務範囲そのものの線引きは行政書士の業務範囲と他士業との境界もあわせて確認してください。

雇用形態と人選 ― 届出前に潰しておく条件

実務で最初につまずくのが雇用形態です。東京都行政書士会は案内ページで「委任、請負、業務委託、在籍出向、派遣等の形態での設置は認められません」と明示しています。同会規則第5条第4項も「会員は、補助者を直接雇用し、労働関係諸法令を遵守しなければならない」と定め、生計を一にする配偶者その他の親族で労働者に該当しない者だけを例外としています。令和7年1月16日改定の日行連準則第5条第4項も同じ文言を置いており、直接雇用は東京会に固有のルールではありません。外注先のスタッフに補助者証を持たせるという設計は成り立ちません。

人選についても不適格事由が置かれています。東京会規則第4条を例にすると、次のような者は補助者にできません。

  • 行政書士法第2条の2の欠格事由に該当する者(未成年者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者など)
  • 行政書士又は行政書士法人から懲戒解雇され、その日から3年を経過していない者
  • 住所又は居所が事務所から著しく遠距離で、通勤に概ね2時間以上を要する者(通勤を確認できる資料を提出した場合を除く)
  • 日本国籍を有しない者で、補助者事務に従事できる在留資格等を有しない者
  • 現に行政書士として登録されている者
  • 反社会的勢力と密接な関係性を有する者

なお「臨時に使用する者」を不適格事由に挙げる解説を見かけますが、これは改定前の準則(令和元年11月13日改定版)第4条第5号の規定で、令和7年1月16日改定の現行準則第4条にはありません。現行準則の不適格事由は上記の東京会規則第4条とほぼ同じ内容です。ただし旧準則を踏襲した規則を残している会もある(例:福島県行政書士会補助者規則第4条第4号)ため、短期の臨時スタッフを入れる前に所属会の規則を確認してください。有資格者を迎える場合は補助者ではなく使用人行政書士としての登録になり、法第8条第3項により使用人である行政書士は自分の事務所を設けられません。採用そのものの設計は行政書士事務所のアシスタント採用、事務所側の要件は行政書士の事務所要件で整理しています。

届出の手順と必要書類 ― 東京・兵庫の実例

順序は「雇ってから届け出る」です。東京会規則第7条は補助者を置いたときから2週間以内に設置届を提出すると定めています(同会の案内ページには15日以内と表記されており、いずれにせよ採用後すぐの提出が前提です)。日行連の準則も令和7年1月16日理事会改定で「2週間以内」に改められており(改定前は15日以内)、東京会規則と同じ期限です。ただし旧準則を踏襲したまま15日以内を維持している会もある(例:福島県行政書士会補助者規則第7条)ため、所属会の規則で確認してください。東京会規則第7条第1項や現行準則第7条第1項のように添付書類へ雇用契約書又は労働条件通知書の写しを求める会が多く、労働条件の確定が届出より先に来る点にも注意が必要です。

項目東京都行政書士会兵庫県行政書士会
設置時の主な提出書類補助者設置届(様式第1号)、履歴書、誓約書(様式第2号)、住民票(個人番号を除く)、写真2枚、雇用契約書又は労働条件通知書の写し、外国籍の場合は在留カードの写し補助者設置届出書、履歴書(事務所入所日の記載)、住所を証する書面、誓約書、写真2葉、事務所内配置図(補助者の執務場所を明記)、事務所内写真(席がわかるもの)
設置手数料1名につき3,000円1件につき3,000円
更新・変更・再交付いずれも3,000円(規則第21条)1件につき3,000円
廃止時の提出物補助者廃止届(様式第6号)と補助者証(着用させていた補助者章も返却させる)補助者廃止届出書・補助者証・補助者徽章(手数料不要)
特記事項一般倫理研修の受講義務を果たしていない場合や会費滞納時は補助者証の交付を留保(規則第18条)事務所内の配置図と席がわかる写真の提出を求める運用

東京会は原則として郵送での取扱いで、補助者証の返送まで2週間ほどかかると案内されています。採用初日から窓口へ行かせる前提のスケジュールは組めません。また同会規則第18条により、会員が一般倫理研修を受けていない場合や会費を滞納している場合は補助者証の交付が留保されます。開業初年度に人を入れる予定があるなら、研修受講と会費納付を先に済ませておくのが安全です。

兵庫県行政書士会のように事務所内配置図と補助者の席がわかる写真を求める会もあります。自宅兼事務所では執務スペースの独立性が問われることもあるため、レイアウトを決める段階で補助者を置く可能性を織り込んでおくと二度手間になりません。手数料・提出期限・有効期間はいずれも会ごとに異なるので、必ず所属会の最新の案内で確認してください。

補助者証の有効期間と、更新・廃止までの管理

有効期間の設計は会によって明確に違います。日行連の準則は設置後最初の補助者証は発行日から2年、更新後は5年という発行日起算型です(現行準則第9条第2項)。これに対し東京会規則第9条第2項は「令和6年4月1日から、毎3年間を経た3月31日まで」という期日固定型を採り、いつ交付を受けても満了日が揃う設計になっています。

さらに東京会規則第9条第3項は、期間の定めのある雇用契約を結んだ者や日本国籍を有しない者について、契約の終期や在留期間の終期が先に到来するときはそこまでを有効期間とすると定めています。有期契約で採用した補助者は、契約更新と補助者証の更新が二重に走ることを最初から想定しておく必要があります。

更新は満了日の3か月前から満了日まで(東京会規則第10条、兵庫会も3か月前から手続可)。記載事項の変更は2週間以内(東京会規則第11条)、紛失・毀損時は再交付、退職時は廃止届と補助者証の返納です。東京会では補助者章の返却(規則第9条の2第2項)、兵庫会は補助者徽章の返還も求めています。新しい証を受け取ったら旧証を速やかに返すところまでが一連の手続きです。

これらの期限は、在留期限や許認可の更新と同じ管理台帳に載せてしまうのが確実です。許認可の更新期限管理で使っている仕組みに補助者証を1行足すだけで、失念のリスクはかなり下がります。

届出後に効いてくる監督責任と情報管理

補助者には法第19条の3により秘密保持義務が課され、補助者でなくなった後も続きます。違反は法第22条で1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(親告罪)です。ただし現実に問われるのは行政書士側の監督です。東京会規則第5条は「会員の責任において指揮命令及び監督をしなければならず、業務に関し補助者任せにする等の行為をしてはならない」とし、補助者に事務を行わせたことで依頼者や第三者に損害を与えたときは正当な事由がない限り当然に責任を負う、と明記しています。

記録の保存も見落とされがちです。東京会規則第7条第2項は、補助者名簿に住所・氏名を記載し、履歴書、住民票の写し、雇用契約書等とともに保存すること、補助者を廃止し又は身分を喪失した後も5年間同様とすることを求めています。会に提出された書類は会側で10年保存されます(同規則第22条)。行政書士自身の帳簿は、法第9条により帳簿閉鎖の時から2年間の保存です。

補助者を置くと、住民票、在留カード、戸籍、契約書といった個人情報が一気に事務所へ集中します。誰がどのフォルダを開けるのかを曖昧にしたままだと、退職時の回収漏れが必ず出ます。電子申請のIDやパスワードは、なりすましを避ける観点から行政書士本人が管理するのが基本と考えてください。権限設計は書類管理セキュリティの基礎、マイナンバーの取扱いは行政書士事務所のマイナンバー管理で扱っています。

まとめ

補助者は登録ではなく届出の制度です。法令が定めるのは施行規則第5条の届出義務までで、様式・添付書類・手数料・有効期間は所属単位会の補助者規則が決めます。まず自分の会の規則を通しで読むところから始めてください。

任せられるのは判断を伴わない事務までです。名義と判断は行政書士本人に残り、職務上請求書は使者としての利用にとどまり、入管の申請取次は届出をした行政書士本人しか行えません。ここを曖昧にすると懲戒や罰則のリスクに直結します。

雇用形態は直接雇用が原則で、業務委託や派遣では受理されないのが通例です。現行の日行連準則第5条第4項も直接雇用を明記していますが、旧準則ベースの規定を残している会もあるため、所属会の補助者規則で必ず確認してください。不適格事由、通勤時間、在留資格までを採用面接の段階で確認しておけば、届出で止まることはほとんどなくなります。

届出後は監督責任と記録保存が続きます。補助者名簿と関係書類の保存、補助者証の携帯と補助者章の着用、更新期限、退職時の返納までを一つの管理表に載せ、担当が変わっても回る形にしておくことが、事務所を人数で拡大していくための前提条件になります。

Q. 補助者になるのに資格や試験は必要ですか。

A. 行政書士試験の合格や特定の資格は求められていません。ただし各単位会の補助者規則が不適格事由を定めており、東京都行政書士会では行政書士法第2条の2の欠格事由に該当する者(未成年者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなってから3年を経過しない者など)、行政書士等から懲戒解雇されて3年を経過しない者、現に行政書士として登録されている者などは補助者にできません。現行の日行連準則(令和7年1月16日理事会改定)第4条第1号も「行政書士法第2条の2各号のいずれかに該当する者」と定めており、18歳未満は同法第2条の2第1号の「未成年者」として不適格になります。なお「満18歳に達していない者」「臨時に使用する者」という独立の号は改定前の準則の規定で、現行準則にはありません(旧準則ベースの単位会規則には残っている場合があります)。

Q. 業務委託契約のフリーランスや派遣スタッフを補助者として届け出られますか。

A. 東京都行政書士会は「委任、請負、業務委託、在籍出向、派遣等の形態での設置は認められません」と案内しており、同会の補助者規則第5条第4項も補助者を直接雇用することを求めています。令和7年1月16日改定の日行連準則第5条第4項にも同じ直接雇用の規定が置かれました。設置届の添付書類に雇用契約書又は労働条件通知書の写しが含まれることからも、雇用関係を前提とした制度設計であることが分かります。ただし旧準則を踏襲して「労働関係の法令に抵触しないよう整備する」にとどめている会もあるため、所属会の規則で確認してください。

Q. 補助者に職務上請求書を使わせてもよいですか。

A. 日行連の職務上請求書購入時の誓約書では、使用人である行政書士に使用させる場合と使者として補助者を用いる場合を除いて他人に使用させない、とされています。つまり補助者は行政書士の使者として動く範囲にとどまり、請求の要否や記載内容の判断は行政書士が行います。同誓約書には、使用人である行政書士や補助者が行った行為について購入した行政書士が責任を負う旨も明記されています。

Q. 補助者に入管への申請取次を任せられますか。

A. 任せられません。申請等取次ぎは、所属する単位会を通じて地方出入国在留管理局へ届出を行い、届出済証明書の交付を受けた行政書士本人が行うものです。補助者は取次者になれないため、窓口対応まで含めて任せる前提で人員計画を立てると成り立ちません。なお受入れ機関等の職員や公益法人の職員に対する承認制度は、これとは別枠の仕組みです。

Q. 補助者証の有効期間はどのくらいで、更新を忘れるとどうなりますか。

A. 会によって設計が異なります。日行連の準則(現行第9条第2項)は初回2年・更新後5年という発行日起算型、東京都行政書士会は令和6年4月1日を起点に3年ごとの3月31日までという期日固定型です。更新できるのは満了日の3か月前から満了日までとしている会が多く、この期間を過ぎると改めて設置の手続きが必要になる場合があります。有期雇用や在留期間がある場合は、その終期が先に到来すればそこで有効期間が切れる点にも注意してください。

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※ 本記事は2026年8月時点の法令および各行政書士会の公表情報をもとに作成しています。日本行政書士会連合会の補助者規則(準則)は令和7年1月16日理事会改定版を参照していますが、補助者に関する様式、添付書類、提出期限、手数料、補助者証の有効期間などは各都道府県の行政書士会が定める補助者規則により異なり、改正されることもあります。実際の手続きにあたっては、必ず所属する単位会の最新の規則・案内をご確認ください。

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