「行政書士の書類は2年で捨ててよい?」。答えを出す前に、帳簿、依頼者から預かった原本、事務所の税務書類を分ける必要があります。同じ案件フォルダの中でも、保存する理由と期間は同じではありません。
この記事は、法令で確認できる業務帳簿の期間と、事務所で保存ルールを作る手順を整理します。年数だけで一括削除せず、「何を・いつから・誰の義務として保存するか」を確認するために使ってください。
「士業は一律○年」ではありません。業務帳簿の法定期間と、預かり資料・税務書類・契約上の保存を分け、廃棄前には未解決案件や返却の要否も確認します。
保存期間は、まず書類を3つに分けて確認
- 専門業務の帳簿・事件簿:各士業の法令で対象と起算点を確認。
- 依頼者の資料・案件記録:原本返却、委任契約、所属会の規程、未解決事項等を確認。
- 事務所自身の税務・労務書類:個人・法人、書類の種類ごとの義務を確認。
たとえば、行政書士法の帳簿の規定を、そのまま「顧客から受け取ったデータを全部2年で削除できる」というルールにはできません。返却する原本と、保存する記録も別に管理します。
法令で確認できる業務帳簿・事件簿の保存期間
下表は法令で確認できる対象の例です。各士業のすべての書類を網羅するものではありません。年数だけでなく、対象書類と起算点までセットで読んでください。
| 職種・対象 | 期間・起算点 | 法令の根拠 |
|---|---|---|
| 行政書士:業務帳簿とその関係書類 | 帳簿閉鎖時から2年間 | 行政書士法9条2項 |
| 開業社会保険労務士:業務帳簿とその関係書類 | 帳簿閉鎖時から2年間 | 社会保険労務士法19条2項 |
| 税理士:税理士業務に関する帳簿 | 帳簿閉鎖後5年間 | 税理士法41条 |
| 司法書士:事件簿 | 事件簿閉鎖後7年間 | 司法書士法施行規則30条2項 |
| 土地家屋調査士:事件簿 | 事件簿閉鎖後7年間 | 土地家屋調査士法施行規則28条2項 |
| 海事代理士:法21条1項の帳簿 | 最終の記載日から3年間 | 海事代理士法21条2項 |
帳簿の年数を、事件の全資料へ広げない
税理士の業務帳簿と、顧問先が保存する税務資料は別の対象です。司法書士・土地家屋調査士の事件簿と領収証副本も、同じ規定ではありません。領収証副本はそれぞれ施行規則29条1項・27条1項で作成日から3年ですが、別の税務上の義務等が重なる場合も確認します。
弁護士・弁理士の一般事件資料について、この記事では一律の保存年数を示していません。対象の書類、所属会の規程、委任契約等を確認してください。根拠の異なる年数を、表の空欄を埋めるために当てはめないことが重要です。
事務所自身の税務書類と、電子取引データは別に確認
法人の帳簿・取引書類は、原則7年
国税庁No.5930では、法人自身の帳簿と取引関係書類は、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間としています。一定の欠損金・災害損失のある事業年度は10年(2018年4月1日前開始事業年度は9年)です。
これは法人税に関する説明です。個人事務所へ同じ年数を一律に適用したり、顧客の全資料を事務所が同じ期間保存する根拠にしたりしないでください。詳細は国税庁「帳簿書類等の保存期間及び保存方法」をご確認ください。
電子メールで届いた請求書等は、対象と保存方法を確認
自事務所の取引で、保存義務のある書類に相当する電子取引データは、原則として電子データの保存が必要です。顧客から受け取ったあらゆるファイルが、自事務所の税務書類になるわけではありません。
改ざん防止には、タイムスタンプや履歴の残るシステムのほか、要件に沿った事務処理規程の策定・運用・備付けという方法もあります。検索要件の免除や猶予措置もあるため、「有料のタイムスタンプが必須」「紙を捨てればすべて対応済み」と判断しないでください。
対象・要件・簡便措置は国税庁の電子取引データ保存の案内で確認できます。紙書類のスキャン保存は、電子取引データとは別の要件確認が必要です。
保存台帳に必要なのは、年数より「根拠と起算点」
フォルダ名だけでは、なぜ残しているかを後任が判断できません。まずは表計算でもよいので、次の項目をそろえます。年数の設定は担当者が根拠を確認し、一覧へ反映してください。
| 項目 | 残す内容 |
|---|---|
| 分類・対象 | 業務帳簿、預かり原本、案件記録、税務資料等 |
| 根拠・期限 | 法令・契約・規程、起算日、保存終了の判定日 |
| 所在・担当 | 紙の保管場所/データの所在、管理者、閲覧権限 |
| 原本・返却 | 原本か写しか、返却予定・返却記録 |
| 廃棄保留 | 未解決案件、紛争、監査・照会など保留の理由 |
| 処分記録 | 確認者、返却・削除・廃棄の実施日と方法 |
保存期間を過ぎても、未解決の請求や紛争があれば廃棄を止める検討が必要です。反対に、理由なく個人情報を持ち続ける運用にも注意します。民法の消滅時効を、そのまますべての書類の保存期限と置き換えないようにしましょう。
台帳が増えて管理しきれないなら、文書管理の仕組みを設計する
「期限が分からない」「担当者が異動すると所在不明」「削除してよいか判断できない」。この段階では、メール共有よりも、文書の分類・権限・保存と廃棄のルールを実装する業務システムの検討が合います。
TechSyncへの開発相談では、今の台帳とフォルダ構成、文書の種類、利用人数、既存システム、権限や承認の条件を整理できます。保存期限の算定、廃棄保留、承認、履歴、データ移行・出力など、必要な機能を個別に設計する相談です。すべてが既製品の標準機能であるという説明ではありません。
顧客との確認連絡は、RenRakuの役割
「いつ返却を依頼されたか」「この資料について何を回答したか」を追うには、顧客対応の履歴も必要です。RenRakuとAIは、許可した会話・添付の確認や返信下書きに使う入口として検討できます。AIによる確認・返信準備の案内をご覧ください。
ただし、RenRakuを法定年数の保管保証や電子帳簿保存法対応保管庫として案内しているわけではありません。正式な文書保存の仕組みと、顧客への連絡を分けて設計しましょう。
書類保存のよくある質問
行政書士の書類は、すべて2年で処分できますか?
できるとは限りません。行政書士法9条2項は業務帳簿とその関係書類を帳簿閉鎖時から2年間保存する規定です。預かり原本、税務書類、契約・所属会規程や未解決案件の記録は別に確認します。
電子保存には、タイムスタンプが必須ですか?
電子取引データの改ざん防止には、要件に沿った事務処理規程の策定・運用・備付け等も選択肢です。対象となる取引データ、可視性・検索、免除や猶予措置を国税庁の最新案内で確認します。
文書管理システムの開発は、何から相談できますか?
今の台帳・フォルダ構成、文書分類、利用人数、権限、保存・返却・廃棄のルールを整理する段階から相談できます。法令上の判断を確認したうえで、台帳や承認・保留・履歴等の要件を個別に設計します。
最初は、1種類の文書から保存ルールを作る
業務帳簿、預かり原本、税務資料を混ぜず、種類ごとに根拠・起算日・所在をそろえます。管理の負担が大きい部分から、台帳とシステムをつなぐ。いきなり全書類を自動判定するより、判断できる状態を作ることが先です。
2026年10月17日、本文中の各法令と国税庁資料を確認し、対象書類・年数・起算点・電子保存の説明を修正しました。個別の廃棄可否は、適用法令・所属会規程・契約と案件の状態で確認してください。