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士業事務所の案件管理、Excelの限界が見え始めていませんか

中小企業基盤整備機構の調査(2024年)によると、DXに取り組んでいる、または検討している中小企業の割合は42.0%に達し、前回調査の31.2%から10.8ポイント上昇しています(中小企業基盤整備機構 DX推進調査)。しかし、士業事務所の現場ではいまだにExcelや紙のファイルで案件を管理しているケースが少なくありません。

案件数が増えるにつれて「あの書類、どの案件だっけ」「この申告の期限はいつだったか」といった情報の散逸が頻発し、対応漏れのリスクが高まります。Excelや紙での管理に限界を感じている事務所も少なくありません。

さらに弁護士業界では、2026年5月21日の改正民事訴訟法完全施行に伴い、弁護士等には裁判所システム(mints)の利用が原則義務化されます(最高裁判所)。弁護士ドットコムの調査によると、mintsを一度も使ったことがない弁護士は65.5%にのぼり、デジタル対応の遅れが浮き彫りになっています。

この記事では、弁護士・税理士・行政書士それぞれの業務に適した案件管理システムを料金・機能・対象規模の3軸で比較します。専用ツール7選に加え、kintone・Notionなどの汎用ツール3選も取り上げ、合計10ツールを一覧表で整理しました。

案件管理システムを選ぶ5つの比較ポイント

案件管理システムは「導入したものの活用しきれなかった」という失敗が起きやすい領域です。士業事務所の業務特性を踏まえた選定基準を整理します。ツール選定の全般的な考え方については士業事務所の業務ツールの選び方ガイドでも解説しています。

士業固有の業務機能があるか

弁護士であればコンフリクトチェック(利益相反確認)とタイムチャージ管理、税理士であれば申告期限の自動管理と顧問先別の進捗追跡、行政書士であれば許認可の種類ごとの必要書類管理が不可欠です。汎用ツールで代替する場合は、これらの機能を自前で構築する手間が発生する点を考慮してください。

事務所の規模に合った料金体系か

1名で運営する個人事務所と10名超のスタッフを抱える事務所では、最適な料金体系が異なります。個人事務所は月額数百円〜数千円のライセンス課金型、中規模事務所は基本料金+ユーザー数課金型が一般的です。無料プランの有無も重要な判断材料になります。

既存の会計・業務ツールとの連携

請求書発行・会計ソフト・カレンダー・チャットツールなど、すでに使っているツールとデータ連携できるかどうかを確認します。連携がなければ、同じ情報を複数のシステムに手入力する二重作業が発生します。API連携やCSVインポート/エクスポートの対応状況もチェックポイントです。

クラウド型かオンプレミス型か

小規模事務所にはクラウド型が適しています。初期費用が低く、サーバー管理が不要で、外出先やリモート環境からもアクセスできます。本記事で紹介するシステムはすべてクラウド型です。数十名規模でデータの社内完結が必須の事務所には、オンプレミス型も選択肢に入ります。

データ移行と導入のハードル

Excelからの移行がスムーズに行えるか、CSVインポート機能があるか、初期設定にどの程度の時間がかかるかは導入成否を左右します。無料トライアル期間中に実際のデータで試せるシステムを選ぶと、導入後のミスマッチを防げます。

弁護士向け案件管理システム4選の料金と機能

弁護士業務に特化した案件管理システムは、事件管理・コンフリクトチェック・タイムチャージの3機能を標準搭載しているのが特徴です。2026年5月のmints原則義務化を控え、デジタル対応を加速する事務所が増えています。料金は2026年3月時点の各社公式サイト情報に基づきます。

システム名無料プラン有料プラン(税抜)主な特徴
loioz なし ライト ¥880/月
ベーシック ¥1,480/月
フル ¥3,980/月
1ライセンス単位の課金。契約期間縛りなし
firmee 30件まで無料 プレミアム ¥4,980/月
年払い ¥49,800/年
初期費用ゼロ。Google/LINE/Chatwork連携
LegalWin 30件まで無料 スターター ¥1,480/月(年払い)
月払い ¥1,980/月
PDF全文OCR検索。通帳OCR機能搭載
LEALA なし 要問い合わせ Salesforce基盤。経営分析ダッシュボード

loioz — 低コストで始められる個人事務所向け

loiozは1ライセンス月額880円(税抜)から利用できる弁護士向けクラウドシステムです。顧客管理・案件管理・裁判管理・会計(報酬/預り金/実費)・スケジュール・コンフリクトチェックと、弁護士業務に必要な機能を一通り備えています。契約期間の縛りがなく、クレジットカード払いで即日利用開始できる手軽さが特徴です。

ベーシックプラン(¥1,480/月)では会計機能が追加され、フルプラン(¥3,980/月)ではカスタムフィールドや高度なレポート機能が使えます。複数人の事務所でもライセンス数分の課金で済むため、コストの見通しが立てやすい料金体系です。

firmee — 30件まで無料、個人弁護士の入門に

firmeeは現役弁護士が開発に携わったクラウド型の事件管理サービスで、30件までの案件を無料で管理できます。事件情報を中心に電話メモ・裁判情報・後見案件などを一元管理でき、コンフリクトチェックも標準搭載しています。Google・Microsoft・LINE・Chatwork・Dropboxとの外部連携に対応しており、既存のワークフローに組み込みやすい設計です。

プレミアムプラン(月額¥4,980または年額¥49,800)にアップグレードすると案件数の制限が撤廃されます。初期費用は一切かからず、5分で利用開始できる導入のしやすさが魅力です。

LegalWin — PDF全文検索とタイムチャージを両立

LegalWinも30件まで無料で使える弁護士向けシステムです。PDF書類をクラウドにアップロードすると全文OCR検索ができる点が独自の強みで、膨大な裁判記録の中から目的の記述を即座に見つけられます。タイムチャージ機能や通帳OCR機能(銀行明細の自動読み取り)も搭載しており、経理業務の効率化にも寄与します。

スタータープラン(年払い月額¥1,480、月払い¥1,980)は弁護士1名単位の課金で、事務員アカウントは無料で追加できる点もコスト面で有利です。AWSベースのセキュリティを採用しており、リモート環境からのアクセスにも対応しています。

LEALA — 中大規模事務所の経営可視化に

LEALAはSalesforceを基盤とした弁護士向け案件管理システムで、企業法務から一般民事まで幅広い案件に対応します。タイムチャージの自動計測、請求管理、経営分析ダッシュボードなど、大規模事務所の経営管理に必要な機能を備えています。Salesforce AppExchange上の多数のアプリと連携可能で、拡張性の高さが特徴です。

料金は事務所の規模・要件に応じた個別見積りです。デジタル化・AI導入補助金2026の活用も考えられますが、対象ツールかどうかは公式ポータルのITツール検索で個別にご確認ください。

税理士・会計事務所向け案件管理システム3選

税理士事務所の案件管理は、顧問先ごとの申告期限管理・月次/決算の進捗追跡・担当者別の工数把握が核となります。税理士業界のDX対応については税理士事務所のDX・業務効率化ガイドでも詳しく解説しています。

システム名無料プラン有料プラン主な特徴
AxisOne 10名まで無料 11名以降 ¥500/人/月(税抜) 申告書データ自動読取り。消費税課税判定
ZoooU なし 基本 ¥17,820/月
+ ¥1,980/ID(税抜)
税務業務テンプレート。タスク自動生成
MyKomon 30日間体験版 要問い合わせ 3,000以上の会計事務所が導入。資料回収管理

AxisOne — 10名まで無料の税理士特化型

AxisOneはベンチャーサポート税理士法人(顧問先1万社超)の監修で開発された税理士事務所向けシステムです。10名までは完全無料で利用でき、11名以降はアカウントあたり月額500円(税抜)と低コストで導入できます。

申告書データの自動読み取り機能を搭載しており、既存の顧問先情報を手入力なしで取り込めます。消費税の課税判定を自動で行う機能や、決算・申告の進捗管理画面も備えており、税理士事務所の日常業務に直結した設計です。

ZoooU — 税務業務のタスクを自動生成

ZoooUは税理士事務所の業務フローに特化したクラウドシステムです。税務業務のテンプレートに基づいてタスクを自動生成する機能があり、「月次入力→申告書作成→レビュー→提出」といった定型フローを漏れなく管理できます。顧客管理・スケジュール管理・コミュニケーション機能も統合されており、事務所内の情報共有を一元化します。

基本料金が月額17,820円(税抜)に加えてユーザーごとに月額1,980円が発生するため、3名以上のスタッフがいる事務所向けのコスト構造です。

MyKomon — 3,000事務所超の導入実績

MyKomonは名南経営グループが運営する会計事務所向けの総合プラットフォームで、3,000以上の会計事務所・職員5万人が利用している国内最大級のサービスです。スケジュール管理・日報・資料回収状況の管理・給与計算・財務診断・工数分析など、会計事務所の業務全般をカバーします。

料金は月会費制で個別見積りとなりますが、30日間の体験版が用意されています。長年の運用実績に基づく豊富なテンプレートと、会員向けの経営支援コンテンツが付帯する点が他のシステムにない強みです。

行政書士が案件管理に活用できる汎用ツール3選

行政書士業務は許認可申請の種類が多岐にわたるため、弁護士や税理士のように「業務特化型」のシステムが市場にほとんど存在しません。そのため、カスタマイズ性の高い汎用ツールを業務に合わせて設定するのが現実的なアプローチです。

ツール名無料プラン有料プラン(税抜)案件管理での活用法
kintone 30日間無料 ライト ¥1,000/人/月
スタンダード ¥1,800/人/月
※最小10ユーザー
許認可の種類ごとにアプリを構築
Notion フリー(永年無料) プラス ¥1,650/人/月(年払い)
月払い ¥2,000/人/月
データベースで案件ボードを作成
HubSpot CRM 永年無料(2名まで) Starter ¥2,400/人/月〜 取引パイプラインで進捗を可視化

kintone — ノーコードで許認可業務アプリを構築

kintoneはサイボウズが提供するノーコード業務アプリ構築プラットフォームです。ドラッグ&ドロップでフォームを設計でき、「建設業許可申請管理」「在留資格申請管理」「相続手続き管理」といった許認可の種類ごとに専用のアプリを作成できます。

行政書士事務所での活用例としては、案件ステータス(受任→書類収集→申請→完了)の管理、顧客情報の紐付け、申請期限のアラート設定などが挙げられます。ただし最小契約が10ユーザーからのため、ライトコースでも月額10,000円(税抜)が最低費用となる点は留意が必要です。

Notion — 無料で始められるデータベース型管理

Notionのフリープランは永年無料で、データベース機能を使って案件管理ボードを構築できます。カンバン表示(ボード形式)で案件のステータスを視覚的に管理したり、テーブル表示で一覧性の高い案件リストを作成したりと、柔軟なレイアウトが可能です。

1名で運営する行政書士事務所であれば、フリープランだけで十分に運用できます。チームで使う場合はプラスプラン(年払い月額¥1,650/人)に移行すると、ページ履歴やゲスト招待などの機能が追加されます。コンフリクトチェックや申請期限アラートなどの専門機能は自前で設計する必要があるため、ITに一定の親和性がある方に向いています。

HubSpot CRM — 永年無料のパイプライン管理

HubSpot CRMは営業支援ツールとして知られていますが、「取引(Deal)」パイプライン機能を案件管理として応用できます。「問い合わせ→面談→受任→書類収集→申請→完了」といったステージを設定し、各案件がどの段階にあるかを視覚的に把握できます。

無料プランでも取引パイプライン・コンタクト管理・メール連携・ミーティングスケジュールが利用でき、2名までのユーザーに対応しています。新規顧客の問い合わせから案件化までの流れを管理したい事務所には、新規顧客受付フローの仕組み化と組み合わせると効果的です。

士業別おすすめシステム一覧|10ツール比較表

ここまで紹介した10ツールを一覧で比較します。事務所の規模・予算・業種に応じて、候補を絞り込む際の参考にしてください。

区分ツール名月額目安(税抜)無料枠対象規模
弁護士loioz¥880〜/人なし個人〜小規模
firmee¥4,98030件まで個人
LegalWin¥1,480〜/人30件まで個人〜小規模
LEALA要問合せなし中〜大規模
税理士AxisOne¥500/人10名まで小〜中規模
ZoooU¥17,820+¥1,980/IDなし中規模
MyKomon要問合せ30日体験全規模
汎用kintone¥1,000〜/人30日間全規模
Notion¥1,650〜/人永年無料個人〜小規模
HubSpot CRM¥2,400〜/人永年無料全規模

デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)を活用すれば、導入コストの1/2(小規模事業者は賃上げ等の要件を満たすことで最大4/5)、上限450万円まで補助を受けられます。クラウド利用料は最大2年分が対象です。第1次申請期間は2026年3月30日〜5月12日。詳細は中小企業基盤整備機構の公式サイトで確認できます。

Doclyで案件ごとの書類収集を効率化

案件管理システムで進捗を追跡できるようになっても、案件ごとに必要な書類を顧客から回収する作業が手作業のままでは、ボトルネックは解消されません。「依頼した書類が届いていない」「どの案件のどの書類が未提出か把握できない」——こうした書類回収の課題は、案件管理とは別のレイヤーで解決する必要があります。

Doclyは、士業事務所の書類回収・管理に特化したクラウドサービスです。顧客にURLを送るだけで書類のアップロードを依頼でき、提出状況をリアルタイムで確認できます。案件管理システムで「書類収集中」のステータスになっている案件に対して、Doclyで回収状況を一元管理すれば、催促の手間と対応漏れを同時に削減できます。

案件管理の課題Doclyによる解決
顧客からの書類回収が遅延するURLを送るだけで依頼完了。リマインド機能で催促を自動化
どの案件の書類が未提出か分からない案件ごとに提出ステータスをダッシュボードで確認
メール添付でファイルが散逸するクラウド上に書類を一元管理。案件との紐付けが容易

案件管理の次は、書類回収の仕組み化

案件管理システムとDoclyを組み合わせれば、案件の進捗管理と書類の回収管理を同時に効率化できます。月額980円から、3分で導入完了。

> 書類回収を今すぐ効率化する

まとめ — 士業の案件管理システム選定チェックリスト

案件管理システムは「高機能なものを選ぶ」より「自事務所の業務に合ったものを選ぶ」ことが成功の鍵です。以下のチェックリストで、導入前に確認すべきポイントを最終整理します。

  • 士業固有の業務機能を確認
    弁護士はコンフリクトチェック・タイムチャージ、税理士は申告期限管理、行政書士は許認可書類管理が必須
  • 事務所規模に合った料金体系を選ぶ
    1名ならloioz(¥880〜)やfirmee(無料)、中規模ならZoooUやLEALA。無料プランで試してから判断
  • 既存ツールとの連携可否をチェック
    会計ソフト・カレンダー・チャットツールとの連携がなければ二重入力が発生する
  • 行政書士は汎用ツールのカスタマイズを検討
    kintone・Notion・HubSpot CRMを許認可業務に合わせて設定するのが現実的
  • 補助金の活用を忘れずに
    デジタル化・AI導入補助金2026で導入費用の1/2〜4/5を補助。第1次申請は2026年5月12日まで
  • 書類回収の仕組みも同時に整備
    案件管理だけでなく、顧客からの書類回収フローを整備することで業務全体の効率が向上する

※ 本記事の情報は2026年3月時点の内容です。各サービスの最新情報は公式サイトでご確認ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品・サービスを推奨するものではありません。

士業の案件管理システムに関するよくある質問

案件管理システムとCRM・顧客管理ツールの違いは何ですか?

CRMは顧客情報の一元管理と営業活動の追跡が主目的です。一方、士業の案件管理システムは個別の案件(事件・申請・申告)ごとの進捗管理・期限管理・書類管理に特化しています。弁護士向けシステムではコンフリクトチェック(利益相反確認)やタイムチャージ管理、税理士向けでは申告期限の自動管理など、士業固有の業務機能を備えている点が最大の違いです。

Excelでの案件管理から専用システムに移行すべきタイミングは?

案件数が常時30件を超えた段階が一つの目安です。Excel管理では案件数の増加に伴い、検索性の低下・期限管理の漏れ・複数人での同時編集の困難さが顕在化します。また、スタッフが2名以上になり情報共有が必要になった時点でも移行を検討すべきです。firmeeやLegalWinは30件まで無料で使えるため、Excel管理に限界を感じ始めた段階で試すことができます。

無料で使える案件管理システムはありますか?

弁護士向けではfirmee(30件まで無料)とLegalWin(30件まで無料)が代表的です。税理士向けではAxisOne(10名まで無料)があります。汎用ツールではHubSpot CRM(永年無料・2ユーザーまで)やNotion(フリープラン)も案件管理に活用できます。無料プランは機能や件数に制限があるため、事務所の規模に合わせて有料プランへの移行タイミングを見極めることが重要です。

行政書士に特化した案件管理システムはありますか?

2026年3月時点で、行政書士業務に完全特化した案件管理システムは市場にほとんど存在しません。許認可申請の種類が多岐にわたり標準化が難しいことが背景にあります。そのため、kintone(ノーコードで業務アプリを構築)やNotion(データベースで案件テンプレートを作成)などの汎用ツールを許認可業務に合わせてカスタマイズするのが現実的な選択肢です。

デジタル化・AI導入補助金は案件管理システムにも使えますか?

はい、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)の対象になります。補助上限額は1者あたり最大450万円で、補助率は基本1/2(小規模事業者は賃上げ等の要件を満たすことで最大4/5)です。クラウド利用料は最大2年分が補助対象です。ただし、補助対象となるのはIT導入支援事業者が登録したITツールに限られるため、導入を検討しているシステムが登録済みかどうかを事前に確認してください。

クラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶべきですか?

1〜10名程度の士業事務所であれば、初期費用が低く場所を問わずアクセスできるクラウド型が適しています。月額数百円〜数千円から始められ、サーバー管理も不要です。一方、数十名規模の事務所で厳格なデータ管理ポリシーがある場合はオンプレミス型やハイブリッド型も選択肢に入りますが、保守コストと運用負荷を考慮する必要があります。現在はほとんどの新規導入がクラウド型を選択しています。

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