クラウド移行計画は、①現状の棚卸し、②6Rによる移行戦略の選択、③影響の小さい部分からの段階移行、④検証と切戻し手順の準備、の順で作ると失敗リスクを抑えやすくなります。「クラウドに移したいが、何から手をつければよいか分からない」——中小企業のシステム刷新でよく聞く悩みです。クラウドネイティブ化は、既存システムをそのままクラウドへ載せ替えること(リフト&シフト)とは段階が異なります。本記事では、現状把握から移行戦略の選択、段階的な移行、検証までの計画の立て方を整理します。
クラウドネイティブとは何か
クラウドネイティブとは、クラウドの利点(伸縮性・自動化・回復性)を最大限に活かす設計・運用の考え方です。代表的な構成要素として、コンテナ(Docker等)、マイクロサービス、宣言的なインフラ管理(IaC)、CI/CDによる自動化、可観測性(オブザーバビリティ)が挙げられます。アプリ設計の指針としては、設定や状態の扱いを整理する12-factor appの原則が参考になります。
重要なのは、「クラウドのサーバーに置く=クラウドネイティブ」ではないという点です。まずはリフト&シフトでクラウドに移し、その後に最適化していく、という段階的な進め方が現実的です。開発環境の統一はDockerで開発環境を統一するも参考になります。
移行戦略は「6R」で対象ごとに決める
すべてを同じ方法で移行する必要はありません。システムや機能ごとに、次の選択肢(一般に「6R」と呼ばれます)から方針を決めます。
| 戦略 | 内容 | 向いている対象 |
|---|---|---|
| リホスト | 構成を変えずそのまま移設(リフト&シフト) | まず早く移したい・改修余力が少ない |
| リプラットフォーム | 一部をマネージドサービスに置換 | DBやミドルを運用委託したい |
| リファクタ | クラウド前提に再設計 | 伸縮性や可用性を高めたい中核機能 |
| リパーチェス | SaaS等へ乗り換え | 汎用業務(会計・勤怠など) |
| リタイア | 使われていない機能を廃止 | 利用実態のない資産 |
| リテイン | 当面は現状維持 | 移行価値が低い・制約が強い |
移行計画の進め方
- 1現状の棚卸しサーバー・データ・連携先・依存関係を可視化。データ量と移行手段を把握する
- 2戦略の割当機能ごとに6Rを割り当て、優先順位とリスクを整理
- 3段階移行影響の小さい部分から切り出す。新旧を並走させ、徐々に置き換える「ストラングラーパターン」が有効
- 4検証と切戻し移行後の動作・性能・コストを検証。問題時に戻せる手順(ロールバック)を用意
見落としやすい3つの落とし穴
- ✓データ移行の難しさ
本番データの移送は、整合性・ダウンタイム・文字コードなど想定外が起きやすい工程です。リハーサルを必ず行います。 - ✓ランニングコストの増加
従量課金は使った分だけ積み上がります。移行後の月額を事前に試算しておくことが重要です(補助金でAWSを使ったシステムを構築した後のランニングコスト計算も参照)。 - ✓権限・セキュリティ設計
クラウドのIAM(権限管理)は最小権限が原則。移行と同時に整理しないと、後から直すのは大変です。
補助金を活用したクラウド移行
クラウド移行・再設計の開発費は、補助金の対象になる場合があります。ただし、単なる既存システムの移設だけでなく、革新的な新製品・新サービス開発、生産プロセス改善、省力化投資など、各制度の目的・基本要件に合う事業計画であることが前提です。自社に合わせた移行・リファクタのオーダーメイド開発は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)(少なくとも1つは単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要)や中小企業省力化投資補助金(一般型)が候補になり得ます。登録されたクラウドサービス/ITツールの導入はデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金。令和7年度補正予算事業から名称変更)が対象になり得ます。
注意したいのは、クラウドの月額利用料(ランニングコスト)は対象制度・対象経費・補助対象期間が限られやすい点です。デジタル化・AI導入補助金で登録ITツールのクラウド利用料が対象になる場合でも、クラウド利用料は最大2年分など期間が限定されます。3年目以降は自社負担になることを前提に資金計画を立てましょう。対象経費・補助率・要件は公募回ごとに異なるため、申請前に公募要領で確認してください。補助金申請に関する官公署提出書類の作成・補正等を、他人の依頼を受け報酬を得て業として行うことは、行政書士又は行政書士法人でない者には認められていません。TechSyncはシステム開発を担当し、申請書類の作成・補正等は行政書士法人Treeと連携して進めます。
よくある質問
Q. リフト&シフトとクラウドネイティブ化は同じですか?
A. 異なります。リフト&シフトは構成を変えずクラウドへ移すこと、クラウドネイティブ化はコンテナ・マイクロサービス・自動化などクラウド前提に最適化することです。まずリフト&シフトで移し、その後段階的に最適化する進め方が現実的です。
Q. 全面刷新と段階移行のどちらがよいですか?
A. 多くの場合、影響の小さい部分から切り出す段階移行(ストラングラーパターン)の方がリスクを抑えられます。新旧を並走させながら徐々に置き換え、各段階で検証と切戻し手順を用意します。
Q. 移行で最も失敗しやすい工程は?
A. 本番データの移行です。整合性・ダウンタイム・文字コードなどで想定外が起きやすいため、必ずリハーサルを行い、切戻し手順を準備しておきます。
補助金申請からシステム開発まで、ワンストップで
行政書士法人Treeが補助金申請に関する書類作成・申請支援を担当し、TechSyncがクラウド移行・リファクタリングを含むシステム開発を担当します。何度でも無料でご相談いただけます。個別のご相談も可能です。
> 無料で相談する※ 本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。技術の前提や補助金の制度・要件・補助率は変更されることがあります。最新情報は各公式情報および各省庁・公募要領を必ずご確認ください。