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相続は「業際」と「最新制度」を踏まえて受任設計する

相続手続きは行政書士の主要業務分野のひとつですが、不動産登記は司法書士、税務申告は税理士、紛争・調停・訴訟は弁護士の業務範囲です。それぞれの業際を初回面談で明確に説明したうえで受任することが、後々のトラブル回避と顧客満足の両方に直結します。

あわせて、2024 年は相続実務の制度変更が集中した年でした。戸籍広域交付(2024 年 3 月 1 日施行)で本籍地以外でも直系の戸籍を取得できるようになり、相続登記義務化(2024 年 4 月 1 日施行。不動産を相続で取得したことを知った日から 3 年以内、遺産分割により取得した場合は遺産分割の日から 3 年以内。正当な理由なく申請しない場合は 10 万円以下の過料の対象)がスタートし、法定相続情報番号(2024 年 4 月 1 日運用開始)も使えるようになりました。受任時の進め方も、これらの新制度を前提に組み立てます。行政書士の業際問題(弁護士・司法書士との線引き)行政書士の報酬設定の考え方もあわせてご覧ください。

行政書士が扱える相続手続きの範囲(業際整理)

「相続」と一括りにせず、業務単位で可否を整理します。受任前に依頼者へこの表で説明すると、期待値のズレが減ります。

業務行政書士の可否他士業との関係・根拠
遺言書の作成支援(自筆証書・公正証書の文案)公正証書遺言は公証人と連携。自筆証書は要件チェックが重要
相続人調査(戸籍収集)受任した行政書士業務に必要な範囲で職務上請求書により取得可。戸籍広域交付(2024年3月1日施行)は本人窓口請求限定(職務上請求・郵送・代理人請求は対象外)のため依頼者本人取得を案内
相続関係説明図・法定相続情報一覧図の作成法定相続情報番号(2024年4月運用開始)で不動産登記の添付省略が可能
遺産分割協議書の作成可(事実証明書類の作成)紛争性ある場合は弁護士へ。交渉代理・調停代理は不可
預貯金の解約・払戻し手続き代行金融機関ごとに必要書類・所要期間が異なる
自動車の名義変更(移転登録)自動車登録は行政書士業務
不動産の相続登記不可司法書士法第3条第1項第1号(登記)
相続税の申告・税額計算・税務相談不可税理士法第2条・第52条。計算例・節税アドバイスも不可
相続放棄の申述(家裁手続き)不可司法書士法第3条第1項第4号(裁判所提出書類作成)・弁護士業務。申立書類の作成補助・添付資料の整理も不可
遺産分割の交渉・調停代理不可弁護士法第72条(紛争性ある法律事務)
相続財産清算人の選任申立て不可家庭裁判所への申立て書類作成は司法書士法第3条第1項第4号(司法書士業務)・弁護士業務

受任から完了までの8ステップ実務フロー

  • Step1
    初回面談(無料相談 30〜60 分)相続人・被相続人の関係、財産概要、相続税申告が問題となり得るかの概況確認(基礎控除 3,000 万円+600 万円×法定相続人数を超える可能性があるか)、紛争性の有無、相続登記の要否を確認。具体的な税額計算・申告要否判断は税理士に引き継ぐ前提とし、業際の切り分けを初回で明確にしたうえで、税理士・司法書士の紹介ルートも提示する。
  • Step2
    受任契約と業務範囲の書面化業務範囲・報酬・想定期間・実費(戸籍取得手数料・郵送料)を契約書で明示。行政書士の報酬設定の考え方を参考に、相続丸ごとパックではなく、戸籍収集・遺産分割協議書作成・金融機関手続きなど業務ごとに細分化した見積りも提示できると安心感が増す。
  • Step3
    相続人の確定(戸籍収集)被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍、相続人全員の現在戸籍を収集。職務上請求書で行政書士が取得可能。依頼者本人が動ける場合は、戸籍広域交付(2024 年 3 月 1 日施行)により、本籍地以外の市区町村窓口でも、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍をまとめて取得できる点を案内します。なお兄弟姉妹(傍系)の戸籍は原則として広域交付の対象外で、委任状による代理請求・郵送請求・職務上請求では広域交付を利用できません(従来どおりの本籍地請求が必要)。
  • Step4
    法定相続情報一覧図の作成・申出収集した戸籍を元に法定相続情報一覧図を作成し、法務局へ申出(法定相続情報証明制度自体は平成 29 年 5 月 29 日開始)。2024 年 4 月 1 日以降は、不動産登記の申請において法定相続情報番号の提供により戸籍一式の添付省略が可能となりました。一覧図の保管期間は申出日の翌年から起算して 5 年間、再交付は当初の申出人に限ります(他の相続人が再交付を受ける場合は申出人からの委任状が必要)。
  • Step5
    財産の特定(残高証明書・固定資産評価証明書等)預貯金・不動産・有価証券・自動車等の資料を収集。金融機関への残高証明書請求は相続人からの委任状を受けて代行可能。不動産は名寄帳・固定資産評価証明書で漏れを防ぐ。
  • Step6
    遺産分割協議書の作成相続人間での合意内容を書面化。不動産登記や金融機関手続きで提出することを想定し、相続人全員の署名と実印による押印、印鑑証明書の添付を行うのが実務慣行。紛争性が表面化した場合は弁護士へ速やかに引き継ぎ、行政書士は深追いしない。
  • Step7
    各種名義変更の手続き代行預貯金解約・自動車名義変更等。不動産は司法書士、税務は税理士へ連携。相続登記義務化(2024 年 4 月 1 日施行)により、不動産を相続で取得したことを知った日から 3 年以内、遺産分割により取得した場合は遺産分割の日から 3 年以内の登記が必要です。正当な理由なく申請しない場合は 10 万円以下の過料の対象となるため、司法書士への引き継ぎタイミングは早めが安全。
  • Step8
    完了報告と書類引渡し戸籍・遺産分割協議書・残高証明書のコピー・名義変更完了書類を一式整理して引渡し。アフターフォローとして遺言書作成や生前贈与の相談に発展するケースも多い。

相続手続きで主に必要となる書類一覧

案件の状況により必要書類は変わりますが、行政書士の受任時に主に収集・確認する書類を整理します。

書類用途取得先
被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍相続人の確定本籍地市区町村(職務上請求または広域交付)
相続人全員の現在戸籍相続人の確定各相続人の本籍地市区町村
被相続人の住民票除票・戸籍の附票最後の住所の確認住所地市区町村
相続人全員の住民票住所確認・各種手続きで使用住所地市区町村
相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書添付住所地市区町村(発行から3〜6か月以内が金融機関の運用基準)
固定資産評価証明書・名寄帳不動産の特定不動産所在地市区町村
残高証明書・取引明細預貯金・有価証券の特定各金融機関(委任状で代理請求)
遺言書(公正証書・自筆証書)遺言の有効性確認公証役場(公正証書)・自宅等(自筆証書)
遺産分割協議書分割内容の証明行政書士作成・相続人全員署名押印
法定相続情報一覧図戸籍束の代替(任意)法務局申出

相続関係説明図(私的書類)と法定相続情報一覧図(法務局登記官が証明する公的書類)は別物です。前者は遺産分割協議書添付や金融機関手続きで作成、後者は不動産登記・金融機関等での戸籍束代替として活用します。

他士業連携のタイミングと業際の線引き

相続案件は他士業との連携が前提になる場面が多くあります。連携の必要性とタイミングを初回面談で示しておくと、顧客の期待値調整がスムーズです。

  • 司法書士連携(不動産登記・相続放棄)
    不動産がある場合は、遺産分割協議書の完成前後で司法書士に依頼します。相続登記義務化により、登記期限の管理は受任時に必ず説明。相続放棄は家庭裁判所への申述書類作成が司法書士法第3条第1項第4号で司法書士業務(簡裁140万円以下民事事件代理は同項第6号で司法書士可)のため、行政書士は受任せず紹介。
  • 税理士連携(相続税申告・税務相談)
    相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(相続税法第27条第1項)。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合は早い段階で税理士に相談。行政書士は相続税法基本通達の調整計算・具体的計算例・税額試算・申告書記載方法・節税アドバイスは一切記載・口頭説明しない。
  • 弁護士連携(紛争・調停・訴訟)
    相続人間で意見対立が表面化した時点で、速やかに弁護士に切り替え。遺留分の交渉・金額決定は弁護士法第72条により弁護士業務。行政書士として深追いしない。家庭裁判所での遺産分割調停も弁護士業務。
  • 公証人連携(公正証書遺言)
    公正証書遺言の作成支援では、文案作成・必要資料の整理・証人手配・公証役場との調整を行政書士が支援できます。公正証書遺言の原本は公証役場で保管されますが、遺言の執行は公証人ではなく遺言で指定された遺言執行者等(民法第1006条以下)が行います。証人欠格事由は民法第974条で①未成年者、②推定相続人・受遺者およびこれらの配偶者・直系血族、③公証人の配偶者・四親等内の親族・書記および使用人と定められています。

相続業務で避けるべき表現と受任設計

マーケティング上の言い回しが業際違反と評価されるリスクがあります。広告・ホームページ・CTA で以下の表現は避けます。

  • 「相続放棄のサポート」「相続放棄の周辺サポート」 — 相続放棄は家庭裁判所への申述手続きであり、申述書等の裁判所提出書類の作成は司法書士法第3条第1項第4号(または弁護士業務)の領域です。行政書士は相続放棄手続き自体を受任・広告せず、必要に応じて司法書士・弁護士へ紹介する設計が安全です。戸籍取得業務を別個に行う場合でも、相続放棄申述の代行・書類作成補助と誤認されない表現にする必要があります。CTA は「遺産分割協議で相続を進める場合」への転換が安全
  • 「相続税の節税対策」「相続税申告サポート」 — 税理士法違反のおそれ。税務相談は提携税理士へ確実に引き継ぐ
  • 「遺留分の調整サポート」「遺留分侵害額の算定」 — 遺留分の交渉は弁護士法第72条違反のおそれ
  • 「相続トータルサポート」「相続まるごとお任せ」 — 範囲不明確で職域違反含意のため禁止。「戸籍収集・遺産分割協議書作成・金融機関手続き」のように業務範囲を具体的に明示する
  • 「成年後見申立てサポート」 — 法定後見の家裁申立書類作成は司法書士法第3条第1項第4号(または弁護士業務)。行政書士法第1条の2第2項により行政書士は受任不可。任意後見契約書(公正証書)の文案作成・公証役場連絡などの事前準備は可

主な根拠法令・一次ソース

行政書士の相続サポートに関するよくある質問

Q. 相続手続きの標準的な期間はどれくらいですか?

A. 紛争性がなく、財産構成もシンプルで相続人が国内在住の場合で 3〜6 か月が目安です。戸籍収集に時間がかかる、相続人が多い・海外在住、不動産の所在が広域に分散しているなどの事情で延びます。相続税申告がある場合は申告期限(10 か月)から逆算して進めます。

Q. 相続放棄の相談を受けたらどう対応しますか?

A. 相続放棄は家庭裁判所への申述(民法第938条)が必要で、その申述書類の作成は司法書士法第3条第1項第4号(同項第6号により認定司法書士は140万円以下の簡裁民事事件の代理が可能、同法第3条第2項)で司法書士業務、調停・審判の代理は弁護士業務です。行政書士は申述書の作成補助・添付資料の整理も含めて受任せず、提携司法書士・弁護士を紹介する形が安全です。記事や広告でも「相続放棄サポート」表現は避け、「遺産分割協議で相続を進める場合」のサポートへ転換します。

Q. 戸籍広域交付制度は行政書士の職務上請求でも使えますか?

A. 使えません。戸籍広域交付(2024年3月1日施行)は本人または直系尊属・卑属本人による請求が対象で、職務上請求は制度の対象外です。依頼者本人が動ける場合のみ案内する制度として位置づけ、行政書士は引き続き職務上請求書で必要な戸籍を収集します。

Q. 法定相続情報一覧図を使うメリットは何ですか?

A. 一覧図の写しを各金融機関・運輸支局等の手続きに提出することで、戸籍一式の重複提示を省略できます。2024 年 4 月 1 日からは法定相続情報番号も使えるようになり、不動産登記の場面でも添付省略が可能です。保管期間は申出日の翌年から起算して5年間、再交付は当初の申出人に限ります。

Q. 遺産分割協議書の署名後、やり直しは可能ですか?

A. 原則として、合意後の分割協議のやり直しは困難です。ただし、新たな遺言書発見、遺産の隠蔽、相続人の漏れ等が判明した場合は、やり直しの余地があります。再協議の必要性が見えた段階で、紛争性の有無で弁護士連携を検討してください。

Q. 相続税の概算計算を依頼者から聞かれたらどう答えますか?

A. 行政書士は税理士法第52条により税務代理・税務相談・税務書類作成ができません。具体的計算例・税額試算・申告書記載方法・節税アドバイスは一切回答せず、「基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える可能性がある場合は税理士に確認してください。提携税理士をご紹介できます」と伝えるに留めるのが安全です。

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※ 相続手続きの具体的な進め方は、案件の内容・相続人の状況・財産構成により異なります。業際に留意しながら個別対応してください。

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