「あの顧問先の情報、どこに書いたっけ?」問題を解決する
顧問先の連絡先はエクセル、案件の進捗はメモ、期日管理はカレンダー、やり取り履歴はメールの受信箱——情報が分散していると、担当者が不在のときに対応できない、引き継ぎに時間がかかる、といった問題が常態化します。
中小企業白書(2022年版)によると、デジタルツールで顧客管理を実施している企業は5割を超える一方、CRMを有効に活用できている中小企業は約10%にとどまっています。士業事務所ではさらにこの傾向が顕著で、「ツールを入れたが使いこなせない」「そもそも何を選べばいいかわからない」という声が多く聞かれます。
この記事では、士業事務所が顧客管理ツール(CRM)を選ぶ際に必要な知識——案件管理との違い・業種別おすすめツール・導入時のチェックポイント——を整理します。
案件管理と顧客管理はどう違う? — 士業が混同しやすいポイント
CRMを検討する前に、「案件管理」と「顧客管理」の違いを整理しておく必要があります。士業事務所では両方が必要ですが、業種によって重心が異なります。
| 比較項目 | 顧客管理(CRM) | 案件管理 |
|---|---|---|
| 管理対象 | 顧客(依頼者・顧問先)の属性・連絡先・やり取り履歴 | 個別の案件・事件の進捗・期日・関係者・書類 |
| 目的 | 長期的な顧客関係の維持・リピート獲得 | 案件ごとの業務を漏れなく遂行 |
| 時間軸 | 長期(顧客との継続関係) | 短〜中期(案件の開始〜完了) |
| 重要度が高い士業 | 税理士・社労士(顧問契約型) | 弁護士・行政書士(スポット案件型) |
理想は両方を統合管理できるシステムです。1人の顧客に紐づく複数の案件を横断的に参照でき、過去の対応履歴を含めて全体像を把握できる環境が最も効率的です。
汎用CRM — どの士業でも使える基盤型ツール
特定の士業に限定されない汎用CRMは、自社の業務フローに合わせてカスタマイズできる柔軟性が強みです。
| サービス名 | 月額料金 | 無料プラン | 導入実績 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| kintone | 1,000円/人〜(税抜) | 30日間トライアル | 国内41,000社超 | ノーコードで業務アプリ構築。士業向けパッケージあり |
| HubSpot CRM | 0円(有料は1,800円/シート〜) | 基本機能無料 | 世界228,000社超 | 無料でも顧客管理・メール・フォーム作成が使える |
| Zoho CRM | 1,680円/人〜 | 3ユーザーまで無料 | 世界25万社超 | 相場の半額程度の低価格。士業ZOHOパッケージあり |
| Salesforce | 3,000円/人〜(税抜) | 30日間トライアル | 世界15万社超 | 世界シェアNo.1。拡張性は最高だが小規模事務所にはオーバースペック |
カスタマイズ重視なら kintone
サイボウズのノーコードプラットフォーム。プログラミング不要で自社の業務に合ったアプリを構築できる。船井総研が提供する「士業グロースクラウド」は、弁護士・司法書士・税理士向けに反響管理・案件管理・利益相反チェック等を実装済みのkintoneパッケージ。月額1,000円/人(ライトコース)から。
コスト最小化なら HubSpot CRM
基本CRM機能が完全無料・ユーザー数無制限で使える。顧客情報管理、メール追跡、フォーム作成、チャットボットまで無料プランに含まれる。マーケティングと顧客管理を一体化したい事務所に向いている。有料プランへの移行は段階的に可能。
業務ツールの選び方ガイドでも解説していますが、ツール選定で最も重要なのは「使い続けられるか」です。高機能でも使いこなせなければ意味がないため、まず無料プランやトライアルで操作感を確認してください。
弁護士・法律事務所向け — 案件管理に強い特化型ツール
弁護士事務所では、案件(事件)ごとの進捗管理・期日管理・利益相反チェックが特に重要です。汎用CRMでも構築可能ですが、最初から業務フローが組み込まれた特化型ツールの方が導入の手間は少なくなります。
| サービス名 | 月額料金 | 無料プラン | 特徴 |
|---|---|---|---|
| loioz | 880円/人〜(税抜) | なし | 業界最安値級。案件管理・期日管理・コンフリクトチェック・請求書作成 |
| firmee | 4,980円/月(プレミアム) | 30件まで無料 | 現役弁護士開発。Google/LINE/Chatwork連携 |
| LEALA | 要問い合わせ | なし | Salesforceベース。一般民事・企業法務の両方に対応 |
| CloudBalance | 要問い合わせ | なし | kintoneベース。カスタマイズ自由度が高い |
コストを抑えたい小規模事務所にはloioz(月額880円/人〜)が、まず無料で試したい場合はfirmee(30件まで無料)が、複雑なカスタマイズが必要な中〜大規模事務所にはLEALA(Salesforceベース)やCloudBalance(kintoneベース)が適しています。
税理士・会計事務所向け — 顧問先管理に強い特化型ツール
税理士事務所では、顧問先ごとの決算期・申告期限・書類回収状況の管理が中心的な課題です。以下は税理士・会計事務所向けに設計されたツールです。
| サービス名 | 月額料金 | 特徴 |
|---|---|---|
| MyKomon | 約6,000円〜(税抜) | 2000年から運営。顧問先情報200項目登録、進捗管理、日報工数分析 |
| 顧客深耕AO | 3,500円/人 | NIコンサルティング製。決算・申告・調査業務の履歴管理 |
| TKC OMSクラウド | TKC会員向け(要問い合わせ) | TKC税務ソフト群との完全連携。法令遵守機能が充実 |
| ZoooU | 要問い合わせ | 税務業務タスク自動生成。AI提案機能搭載 |
すでにTKCのソフトを使っている事務所はTKC OMSクラウドがシームレスに連携します。TKC以外の環境であれば、顧問先情報を200項目まで登録・管理できるMyKomonが業界での認知度と実績の面で有力な選択肢です。
CRM選定の7つのチェックポイント — 士業特有の要件
一般企業と異なり、士業事務所には固有の要件があります。ツールを選ぶ際は以下のポイントを確認してください。
- ✓1. 秘密保持・セキュリティ
弁護士法23条、税理士法38条などで守秘義務が課される士業では、データ暗号化・アクセス権限管理・操作ログ管理・IP制限が必須。クラウドサービスの場合、データの保管場所(国内/海外)も確認すること - ✓2. 期日管理・アラート機能
裁判期日(弁護士)、申告期限(税理士)、許認可申請期限(行政書士)、登記期限(司法書士)は厳守が必須。カレンダー連携やリマインド機能の有無を確認 - ✓3. 利益相反チェック
特に弁護士事務所では必須。過去の依頼者・相手方と現在の案件の当事者に重複がないか自動チェックできるか。loioz・LEALA・CloudBalanceには標準搭載 - ✓4. 案件ステータス管理
受任→書類収集→申請→完了のように、案件の進捗を段階で可視化できるか。ダッシュボードで全体を俯瞰できるか - ✓5. 請求・報酬管理
タイムチャージ管理(弁護士)、顧問料管理(税理士・社労士)、報酬計算・請求書発行。インボイス制度・電子帳簿保存法への対応状況も確認 - ✓6. 既存ツールとの連携
会計ソフト(freee・マネーフォワード・TKC等)、チャットツール(Chatwork・Slack・LINE)、カレンダー(Google・Outlook)との連携可否 - ✓7. 導入・運用のしやすさ
少人数の事務所にはIT専任者がいないケースが多い。ノーコード対応・直感的なUI・サポート体制の充実度・無料トライアルの有無をチェック
書類管理のセキュリティ基礎知識も合わせて確認し、クラウドツール導入時のセキュリティ要件を整理しておくことをおすすめします。
CRMと合わせて書類収集もデジタル化する
顧客管理ツールで案件の進捗を可視化しても、肝心の書類が顧問先から届かなければ業務は進みません。申告資料・届出書類・契約関連書類の回収は、士業事務所で最も手間のかかるプロセスの一つです。Doclyを使えば、書類の依頼・回収・管理をまとめてデジタル化できます。
| CRMだけでは解決しにくい課題 | Docly での対応 |
|---|---|
| 「案件は管理できるが、書類が集まらない」 | URLを送るだけで顧問先がスマホから書類をアップロード |
| 「誰がどの書類を出したか確認できない」 | ダッシュボードで回収状況をリアルタイムに把握 |
| 「メール添付で届いた書類が埋もれる」 | 案件ごとに書類を自動整理。検索・一覧管理が可能 |
| 「マイナンバー等の機密書類をメールで受け取っている」 | 暗号化されたクラウド上でセキュアに受領 |
士業の顧客管理に関するよくある質問
士業事務所に顧客管理(CRM)ツールは必要ですか?
必要です。中小企業白書(2022年版)によると、デジタルツールで顧客管理を実施している企業は5割を超える一方、CRMを有効活用できている中小企業は約10%です。士業事務所でもエクセルや紙管理からの移行により、情報の属人化解消・検索性向上・引き継ぎ容易化といったメリットが得られます。
案件管理と顧客管理の違いは?
顧客管理(CRM)は顧客の属性・連絡先・やり取り履歴を長期的に管理する仕組み。案件管理は個別案件の進捗・期日・関係者を管理する仕組みです。税理士・社労士は顧客管理、弁護士・行政書士は案件管理の比重が高くなる傾向がありますが、両方を統合できるシステムが理想です。
無料で使えるCRMツールはありますか?
あります。HubSpot CRMは基本機能が無料(ユーザー数無制限)、弁護士向けのfirmeeは30件まで無料、Zoho CRMは3ユーザーまで無料です。無料プランで操作感を確認してから有料プランに移行するのがおすすめです。
kintoneは士業事務所に向いていますか?
向いています。kintoneは国内41,000社超が導入しているノーコードプラットフォームで、船井総研が士業向けアプリパッケージ(士業グロースクラウド)を提供しています。月額1,000円/人から利用可能です。ただし自分で構築する必要があるため、すぐに使いたい場合はloiozやfirmeeなどの業種特化型の方が導入は早いです。
まとめ — 士業のCRMは「使い続けられるか」で選ぶ
CRMを有効活用できている中小企業は約10%。高機能なツールを導入しても、使いこなせなければ定着しません。士業事務所のCRM選びで重要なのは、事務所の規模と業務フローに合ったツールを、段階的に導入することです。
- 汎用CRM — kintone(カスタマイズ自由)、HubSpot(無料で開始可)、Zoho(低価格)から事務所規模に合った製品を
- 弁護士向け — loioz(最安値級)、firmee(30件無料)、LEALA / CloudBalance(拡張性重視)
- 税理士向け — MyKomon(業界標準)、TKC OMS(TKC連携)、顧客深耕AO(会計事務所特化)
- チェックポイント — セキュリティ・期日管理・利益相反チェック・既存ツール連携・導入のしやすさを確認
- 書類回収 — CRMで案件管理しながら、Doclyで書類収集を自動化すると業務フロー全体が効率化
※ 本記事の情報は2026年3月時点の内容です。各サービスの最新料金・プラン内容は公式サイトでご確認ください。
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